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AIが超えられない「指先」の競争力

Posted September. 27, 2018 08:18,   

Updated September. 27, 2018 08:18

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東京特派員として勤務していた2014年10月、日本岐阜県大垣市にある中小企業を訪れたことがある。超精密金型製品を生産する大垣精工だ。代表製品は、コンピュータ用ハードディスクドライブ(HDD)に使われる部品だ。部品の中に約8ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)間隔で均一な隙間があるのが特徴。上田勝弘社長は、「飛行機が地上1ミリの上を一定に飛ぶのと同じ精度が必要だ。大垣精工を含めて世界で4社しか作れない」と語った。

韓国金型企業もそんな部品を作ることができるだろうか。パク・スンファン韓国金型工業協同組合理事長に聞いてみた。「容易でない。一定に8ナノメートルの隙間があるように表面を加工するためには、作業所内では全く揺れがあってはならない。傍に道があって、車が通りすぎてだめだ。温度と湿度の管理もしなければならず、設備から熱が出てもいけない。技術力も非常に高くなければならない」

まだ韓国と日本との間には技術力の格差は存在する。東亜(トンア)日報が最近連載を終えた「韓国製造業のゴールデンタイムを守れ」シリーズによると、機械産業競争力の場合、日本は韓国より2〜4年ほどリードしている。韓国は昨年、日本との貿易で283億ドル(約31兆5800億ウォン)の赤字だったが、主な赤字品目は、部品素材などの機械産業の中間材製品だった。

韓国が輸出をすればするほど、日本製部品や素材を多く輸入しなければならない。このため、対日貿易収支は、1965年に日本と国交を再開後、一度も黒字を出せずにいる。このような韓国の立場について、日本の経済評論家小室直樹は「鵜飼い経済」と表現した。首に縄が巻かれた水鳥である鵜は釣った魚を飲み込むことができず、釣り人に奪われることに例えた言葉だ。

古くから韓国政府と地方自治体、機械関連の組合は、絶えずその解決策を探してきた。部品素材の競争力強化策、部品素材の国産化対策、部品素材産業の根幹をなす産業を支援するための「根幹産業支援センター」…。数多い対策を次々と出したが、まだ日本の壁を超えられずにいる。

その理由は、複数あるだろう。一つの井戸を深く掘る日本特有の文化、日本産超精密部品を巡る世界的需要とそれに伴う技術開発などは、日本の機械産業が成長できた原動力である。一方、韓国の中小企業は日本と同様の製品を作っても、市場で信頼性を得るためには時間がかかる。その期間を持ちこたえることができず倒産する企業が数多い。

記者は、韓日間の格差の理由に「指先」競争力の差を追加したい。大垣精工の上田社長は、「超精密技術は人の指先から出てくる。当社はそのような技術者を尊重する。定年になったからと言って追い出したりはしない」と語った。大垣精工には220人の従業員がいるが、当時65歳を超えた従業員は8人だった。定年がないので、70歳を越えても働くことができる。

上田社長は、日本内外の企業に作業現場を公開した。ライバルである韓国の金型中小企業から研修生を受け入れることもある。「技術を盗まれないだろうか」という記者の質問に、「指先で身につけた技術は、1、2ヶ月の研修では学ぶことができない。数十年働いて身につけなければならない」と答えた。

最近、全世界が人工知能(AI)のブームに陥っている。AIが人間の仕事を代替するだろうという懸念も高い。しかし、一つの道を数十年間歩んできて、指先で精密技術を身につけたら、AIを恐れなくてもよさそうだ。定年延長はおまけについてくるだろう。


パク・ヒョンジュン次長 lovesong@donga.com