背中には天使の翼。頭にはいばらの冠。女がピアノを引きながら歌う。
「私がこのように強くなったのはあなたのおかげ。…あなたは私を地獄の火に押し込んだけど」
今三十歳になった歌手にいえる言葉かどうかわからないが、これは生涯の力作だ。米国の人気歌手「ケシャ(本名はケシャ・ローズ・セバート・30・写真)」が5年ぶりに発表した新しいアルバム「Rainbow」のことだ。そのピークである「Praying」が示している。火の穴から傷だらけになって帰ってきた者。彼女が噴き出す苦しみと喜びの獅子吼はどんなものか。14曲、48分間、彼女は何度も感情の摩天楼に登頂する。
この数年間、ダンスポップの歌手に何があったのだろうか。2014年、ケシャは自分のプロデューサーである有名ミュージシャン「ドクター・ルーク」を告訴した。彼が数年間自分を性的、心理的、経済的に搾取したというものである。憤った音楽ファンらがケシャを支持する街頭デモまで行ったが、訴訟は別の話だった。訴訟は4年間進行中。来月は証人資格でレディー・ガガまで法廷に出るようになっている。
ケシャはこれまで、自分の切ない気持ちを込めて80曲を書いて置いたが、発表できなかった。訴訟相手であるドクター・ルークと契約した状態だったから。一歩遅れて日の目を見た新作で、ケシャは音楽的にもルークの手から脱した。制作全般を自分で取り仕切った。
「あの××があなたを悲しませておくな」(「Bastards」)「傷が私たちを完成する」(「Rainbow」)
ケシャの絶唱はエレキ音の代わりに力強い管楽器群とエレキギターサウンドの護衛を受けながら、敵陣に向け総進軍する。呪いを超えた復讐の言葉は、氷の短剣のように冷たく、ゆくゆくは熱くて聖なるものだ。
「あなたがどこかで祈っていることを/あなたの魂が変わることを/あなたが平安になることを/ひざまずいて祈ることを」(「Praying」)
プロモーションビデオの導入部で、彼女の脇台詞は荒野をさまよう人間の質問のようだ。「私は死んだだろうか。それともただ恐ろしい夢に過ぎないのか。もし私が生きているなら、なぜだろうか。神やそんなものがあるなら、なぜ私が愛するすべてのものから私は捨てられたのか」
最後の曲「Spaceship」が、壮大なフィナーレを迎える。神の答えのようだ。「いつも言ってたよね。私が死んだら、私の頭を土の上に置かないでって。スコップも、墓石も要らないって」。
イム・ヒユン記者 imi@donga.com