ドナルド・トランプ米次期大統領について我々はどれほど知っているのだろうか。道楽者や暴言の大物、差別主義者…。しかし、トランプの不動産開発や取引過程を見守ってきた弁護士であり、交渉専門家でもあるジョージ・ロスは、「トランプのように交渉せよ」という本の中で、トランプは驚くほど体系的考え方を持っており、極めて複雑な問題を普通の人たちは全く考えられないほどの創意的方式で解決すると紹介した。
◆1974年、ニューヨーク42番街にあるグランドセントラルターミナル周辺地域は、スラム化していた。コモドホテルは、かつての素晴らしい姿を失ったまま、廃墟になっていた。野心満々な27歳の青年トランプは、このホテルを購入して現代流ホテルに変身させるという事業構想を持っていた。それで、破産状態にも関わらず、ホテル敷地を所有していたペンセントラル鉄道会社、建築許可を担当するニューヨーク市やニューヨーク州、新しいホテルの建設をよく思っていなかったホテル業界、建物から立ち退かなければならなかったテナントら、金を出す投資家の利害が衝突する5つのグループとの交渉を通じて、不可能に見えたプロジェクトを完成させた。このホテルが今、ニューヨークの名物となっているグランドハイアットホテルだ。
◆もちろん、これと異なる主張もある。トランプの自叙伝「取引のコツ(The Art of the Deal)」は昨日、本の広告が出るや否や、教保(キョボ)文庫などで売り切れとなった。しかし、1987年、トランプを18か月間もインタビューして、実際、この本を書いたトニー・シュワルツは7月、米誌「ニューヨーカー」に、「本を売りたいがゆえに、トランプを最も前向きに飾った」と言い、「トランプに注目を集めさせたことを深く後悔している」と告白した。本の内容は全くフィクションであり、そのタイトルも「ソシオパス」(社会病質者)にすべきだったという。
◆ロスは、トランプ流交渉のコアは、「強みを活用し、弱みは他人に転嫁することだ」という。トランプが、彼ならではの直感や突破力で勢力図を揺さぶれば、その後片付けは周りの人たちが引き受けるという。一方、シュワルツは、「トランプはわずか数分間も集中できない」と言い、「彼が核コードを手にすれば、文明の終焉が来るだろう」と警告した。確かなことは、トランプは徹底的な計算に基づいて動くビジネスマンだということだ。韓国はトランプについて勉強すべきことが多い。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com






