政府は、今年に続いて来年度にも赤字予算(管理財政収支基準)を編成する予定だ。中期財政運用計画として「2014年から財政収支の黒字を実現する」と約束していたが、1年ぶりに覆すことになった。朴槿恵(パク・クンヘ)政権下で組む初めての予算から約束を破る格好となったのだ。政府は昨年9月に発表した財政計画で、2014年から黒字予算を組み、2015年からは国内総生産(GDP)に対する国家債務比率(現在36.2%)を20%台に落とすと発表している。
政府の虚言は、来年1年で終わりそうにない。来年度の赤字は、新たな福祉を導入したからではなく、既存の福祉の恩恵を受ける人が増えたために生じたものだ。高齢化が原因だ。福祉公約をきちんと履行しようとすれば、赤字幅はさらに拡大される仕組みだ。朴槿恵政府が目指していた「任期内の均衡財政の達成」からどんどん遠ざかっているのだ。
政府は、国内外の経済環境や政策目標を考慮し、財政の赤字もしくは黒字を選択することができる。国内景気は、すでに回復に向かっており、来年は持ち直しの動きが本格化する見通しだ。人為的な景気浮揚に必要な政府事業のために赤字予算を編成しているのではない。いまの財政赤字は、先に予算を使うところを多く作っておいて、財源の調達方法の研究を怠ったために生じた現象だ。
韓国の福祉支出の対GDP比は9.5%で、経済協力開発機構(OECD)平均(19.5%)の半分にも及ばない。この比率は、OECD加盟の34ヵ国でメキシコに次いで最下位から2番目だ。租税負担率も20.2%と財政需要や国際社会の地位に比べて低過ぎる。「福祉と増税をどのくらいの水準にするべきか」については、国民的な合意が必要だが、福祉の拡充と、そのための増税が避けられない状況だ。
にもかかわらず、政府は租税負担率を2017年に21%まで引き上げる計画だが、これは今後5年にわたってわずか0.8ポイントを引き上げるものだ。それも直接増税ではなく、非課税の整備と地下経済の炙り出しなどを通じて達成するとしている。「増税のない福祉」という大統領選公約に足を引っ張られているのだ。
多くの財政専門家は不可能だと指摘しているが、政府は聞き入れようとしない。政府が、福祉拡大を願うのであれば、国民に「増税は不可欠」と説明した方が正直だ。今後も問題を回避しようとすれば、福祉関連の約束と財政健全性の二兎をすべて逃してしまう結果を招きかねない。






