政府の税法改正案の発表で触発された増税問題が静まりつつある。政界の「中産層税金爆弾」攻撃と朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の叱責を受けて玄旿錫(ヒョン・オソク)経済副首相が謝罪し、税負担が増える基準所得を引き上げることで事態の収拾を図るようだ。問題の発端を突き詰めると、大統領が「増税なき福祉」という実現不可能な公約を宣言し、就任後も公約履行にこだわったことにある。しかし、公約の当事者は責任を問う位置にいて、政府経済チームが犠牲になっている。実に古い政治スタイルだ。
韓国は、財政に対する福祉支出の割合が9.4%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国のうちメキシコを除いて最下位だ。福祉財政は拡充しなければならない。しかし、福祉はまさに税金だ。福祉国家を志向しつつ増税の話を避けることはできない。東亜(トンア)日報は選挙の度に、票を狙った各党の公約乱発に対して無責任なポピュリズムだと批判してきた。しかし、有権者の顔色をうかがって、必要であるにもかかわらず増税案を急いで取り消すことも公約乱発に劣らない新ポピュリズムだ。このようなやり方で公論が歪曲され、政策が揺れ動いては、国の未来は暗い。
大統領は昨年7月に大統領選挙への出馬を宣言し、「福祉手段と租税負担に対する国民の大妥協を推進する。今後50年以上持続できる国民幸福の礎を作る」と誓った。健全な問題意識だった。しかし、時間の経過とともに租税負担の水準に関する言及は少なくなり、結局「増税なき福祉」というスローガンに後退してしまった。
今回政府は福祉の財源を調達するために非課税削減を減らし、「細目の新設と税率の引き上げをしなかったので増税ではない」と強弁した。「公約は守りつつ増税はしない」という大統領の約束を何としても色あせないようにしようとしたのが経済チームの罪なら罪だ。大統領が副首相に責任を転嫁し、租税・福祉議論を直視しないことで政治的負担を避けようとしてはならない。今回の問題を機に、朴大統領は公約を構造調整し、「税金=福祉」であることを正直に認め、「福祉水準と租税負担に対する国民的合意」を引き出さなければならない。
野党も、政治的反射利益に没頭するよりも、国会に戻って税金と福祉に対する真剣な討論に参加し、代案を提示しなければならない。政界がポピュリズムの誘惑から抜け出せないのは有権者の責任も大きい。何よりも国民が無償福祉はありえないということをはっきりと悟らなければならない。






