先月末、元五輪サッカー代表監督の洪明甫(ホン・ミョンボ)氏(44)は、ロシアのアンジ・マハチカラの監督を務めているフース・ヒディンク元韓国代表監督(67)の下で研修を終えて米国へ向かった。その頃大韓サッカー協会の幹部も極秘に米国へ飛んだ。次期代表監督の座を提案して、洪監督と交渉するための出国だという推測が出た。しかし、当事者は帰国後「プライベートな事情で行ってきた」と語り、交渉説を強く否定した。
14年ブラジル・ワールドカップ(W杯)で、韓国代表チームを率いる次期司令塔に洪氏が事実上内定された雰囲気だ。サッカー協会は19日、技術委員会の後に記者会見を開き、「次期監督候補として4人を推薦した。会長団会議を経て最終確定した上、週明けごろ候補者を発表する」と発表した。許丁茂(ホ・ジョンム)サッカー協会副会長は、「洪明甫氏が最も有力だが、まだ確定したわけではない」と話した。
しかし、サッカー協会の周辺では「洪氏のほかには代案がない」という主張が大方の見方だ。現実的に外国人監督を迎え入れたら、再び選手を把握する時間が必要だ。ハン・ジュンヒKBS解説委員は、「韓国サッカーを長期的に見据えると、検証済みの国内監督に任せる戦略が求められる。外国人監督は結局、成績に汲々として短期で終わるしかない」と話した。ハン委員は、「最近、韓国サッカーが落ち着きを失ったのは、監督が頻繁に変わったため、一試合一試合に集中せざるを得ない」と付け加えた。来月は東アジアサッカー選手権大会が始まるため、新たな監督が切実な状況でもある。
結局、国内選手に詳しい上、09年エジプトU20W杯(8強)をはじめ、10年広州アジア大会(銅メダル)、12年ロンドン五輪(銅メダル)で実力を認められた洪氏が最有力候補になるしかない。
許副会長も、「10年後韓国を輝かす100人」に選ばれた洪氏について、本紙の4月13日付けに「大韓民国サッカーの発展をけん引する全ての資質を身に付けた」と評価した。洪氏がヒディンク監督(02年韓日W杯)やディック・アドフォカート監督(06年ドイツW杯)、ピム・ファーベーク監督(07年アジア大会)の下で選手とコーチとして豊富な経験を積み、史上初の五輪メダル獲得の「ロンドン神話」を成し遂げたというのが、許副会長の分析だった。
専門家らは今後、代表チームの大黒柱になる具滋哲(ク・ジャチョル=アウクスブルク)や金甫鍫(キム・ボギョン=カーディフ・シティ)らいわゆる「洪明甫キッズ」を洪氏が最も効果的にコントロールできると見ている。奇誠庸(キ・ソンヨン=スワンジーシティ)、池東沅(チ・ドンウォン=アウクスブルク)、李菁龍(イ・チョンヨン=ボルトン)ら次世代選手も洪監督のカリスマによく適応しているという評価だ。
問題は、洪氏がはたして「1年切りの司令塔」で終わりかねない毒入りの聖杯を受け入れるかだ。ブラジルでの成績が悪かったら、監督職を維持する名分がなくなるからだ。協会の関係者の間でも、「洪明甫という有望株を1年だけ使うにはもったいない」という共感があるため、最善の方策を探しているという。これについて、サッカー専門家は、「W杯の短期成績に一喜一憂せず、長期的に韓国サッカーがW杯で優勝する戦略が求められる。そのためには、検証済みの国内指導者を重用する姿勢が必要だ」と話した。
洪氏が代表監督を受け入れたかどうかはまだ確認されていない。しかし、許副会長は同日、「洪氏と話は済んだか」という質問に対し「感触はあった」と答え、契約期間など細部調整が済んだら、近日中に最終合意に到達できるものと見られる。






