米大統領の警護員を題材にした代表的映画は、1993年公開した「ザ・シークレット・サービス(In the line of fire)」だ。主人公のフランク(クリント・イーストウッド)は1963年、ケネディ大統領の暗殺を食い止められなかったという自責の念に苛まれ、酒に浸って暮らしている元大統領警護員だ。彼はたまたま、現大統領の暗殺陰謀を耳にし、現役に復帰する。戻ってきたオールドボーイが、狙い撃ちされる瞬間、身を呈して大統領を護り、失われた名誉を取り戻すというストーリーだ。米大統領の警護を担当している秘密情報局(SS)要員が、フランクのモデルとなっている。
◆秘密情報局は、南北戦争末期の1865年、財務部傘下に偽造紙幣取締り部署として創設された。密輸や密造酒の詐欺を日常的に働いているマフィアやKKK団などの白人優越主義者らを狩る死神だった。この伝統が続いており、今も、金融犯罪やテロ関連業務に当たっている。1901年、ウィリアム・マッキンリー大統領が暗殺されると、大統領専従警護業務が新たに加わった。職員は7000人あまり、年間予算は16億ドルに上る世界最精鋭警護組織へと成長した。時には1日20時間も命をかけて働く仕事だが、米国内では、「神から授かった職場」といわれている。1万人を超える志願者のうち、上位1%のみが入ることができる。合格率が5.9%のハーバード大学より、入るのが難しいという言葉が出ている理由でもある。初任給は4万3964ドルから7万4891ドル、定年は57歳だ。要員10人中1人が女性だ。
◆しかし、彼らも人間だった。秘密情報局は09年、ホワイトハウスの晩餐会場に招かれなかった夫婦が堂々と入場し、大恥をかいた。昨年、バラク・オバマ大統領のコロンビア訪問に先立って、現地に到着した先発隊が、現地で売春をしたことが明らかになり、9人が辞任するなど、ケネディ大統領暗殺後、最大の危機の直面している。最近は、イスラエルのテルアビブ都心で、オバマ大統領の専用リムジン「ビースト」が故障して止まり、世界の最精鋭警護組織の顔に、更に泥を塗った。事故やミスが頻繁に起きており、存在感もかつてとは違う。同時多発テロ後、所属が財務部から国土安保部へと変わった上、適当に人材を選抜したため、要員らの綱紀が激しく緩んだという批判が殺到した。
◆オバマ大統領は26日(現地時間)、秘密情報局首長に、女性のジュリア・ピアソン首席補佐官を任命するという王手をかけた。女性要員に門戸を開いてから42年しか経っていない保守的警護組織に、女性リーダーを座らせたこと自体が破格なことだ。138年ぶりの初の女性局長が、性的スキャンダルで揺れている秘密情報局をどのように変えるのか気になる。米国にもない女性大統領を輩出した我々は、いつになれば、女性警護室長を目にすることができるだろうか。韓国の大統領警護室は今年で創立50周年を迎える。
朴湧(バク・ヨン)論説委員 parky@donga.com






