未曾有の大規模な停電騒ぎが起きた今月15日、電力取引所の廉明天(ヨム・ミョンチョン)理事長は午前11時半にオフィスを出た。氏はかつて、産業資源部や知識経済部で一緒に働いた元公務員先輩5人と、ソウルの某ホテルで、のんびりと昼食を取り、午後1時45分に会社に戻った。そして、40分間ほど、雑誌社とインタビューを行った。
廉理事長が、昼食のため会社を出る40分前の午前10時50分、電力需給を巡る非常マニュアルの「ブルー段階」が発動された。午後1時50分には、危機レベルが「レッド段階」へと引き上げられた。午後2時50分、循環停電協議が行われ、10分後に電気供給中止措置が開始された。廉理事長が23日の国政監査で、「重要な内容ではなかった」と打ち明けたインタビューを行った時刻は、循環停電を開始する時点だった。
発電所の建設や運転、停止、メンテナンスに関する計画を統制する電力取引所は、給電運用を巡る責任を持っている機関だ。電力供給の頭脳や神経に該当する給電指令所も、韓国電力から電力取引所に渡された。このような機関の責任者である廉理事長の停電大乱日のスケジュールを見れば、危機認識など全く無い。
15日の異常高温は、数日前から予測されていたのに、電力取引所は、「急激な気温上昇により、電力需要が急増し、停電が起きた」と苦しい言い訳を並べた。李宗勳(イ・ジョンフン)元韓国電力社長は、「停止中の水力発電機は1分、止まった状態のガスタービン発電機も30分なら、電気を供給することができる」とし、「電力取引所が発電所に緊急追加稼動を要請したなら、対応できたはずだ」と残念がった。
電力取引所は01年4月、政府の電力事業の構造調整を受け、韓国電力から切り離された。発足後に1年間ほど在任した初代理事長だけが、韓電出身人物であり、廉理事長を含め、02年5月以降に任命された4人の理事長は皆、産業資源部や知識経済部出身の公務員OBだった。構造調整という名の下、OB官僚の天下り人事ポストだけを増やしたことになる。電力取引所を再び韓電に統合させてでも、総合的な電力管理体系を復元させる必要がある。
歴代政権の経験からも分かるように、大統領のレームダック(任期末の権力漏れ)が始まると、公企業の最高経営者(CEO)や役員・従業員の綱紀が緩みやすい。OB官僚や天下り公共機関の首脳らの事なかれ主義は、電力取引所に限られたことではないだろう。大統領府も大統領任期末にねじが緩んでいる兆しがはっきりしている。大統領府は最近、何をしているのか分からないという言葉まで出ている。李明博(イ・ミョンバク)大統領は、自分のレームダックを否定してきたが、それなら、より一層、任期の最終日まで、綱紀引き締めに力を入れ、国政についてきめ細かく気を配らなければならないだろう。






