15日午後、ソウル城北区(ソンブクグ)現代(ヒョンデ)デパート彌阿(ミア)店のカルチャーセンターではセミナー開始前、全受講生が「東北関東大震災犠牲者」に黙祷を行った。日本の大震災後、国内の多くの行事で犠牲者に哀悼の意を表す場面が増えているが、製パン講座の時間での哀悼は珍しい。
しかし、この講座の講師を見ると頷ける。日本人講師が、本国が恐慌状態に陥った中でも約束を守るため、韓国を訪れたためだ。同日午前、金浦(キンポ)空港に降りて、すぐデパートに向かった杉山洋春さん(32)は、受講生と挨拶を交わした後、黙祷した。
杉山さんは、現代デパート創立40周年を記念して開設した「韓日文化交流、日本の名講師招待行事」の初セミナーである「日本の製パン王、杉山洋春の人気クリームパン」の主人公。東京の有名ベーカリー「ブーランジェリー・ニコラ」のオーナー・シェフで、ベーカリーコンサルタントと製パンクリエーターとしても名声を博している氏は、日本西武デパートの「池袋カルチャーセンター」の代表講師として、同日、韓国でのセミナーへの出席が予定されていた。
ところが11日、日本で大震災が発生し、大きな被害を受けた上、原子力発電所まで危険な状態であることを受け、現代デパートのカルチャーセンター長のペク・ソンヘ氏は急いで杉山さんに電話をかけた。杉山さんは無事だったが、東京の被害が大きかった。西武デパートも先週末、通常営業ができず、カルチャーセンターの講義も全て中止となった。
ペク・センター長は、杉山さんに「国家的な災難に見舞われて厳しい状況だと思うので、セミナーは延期してもいい。受講生にはよく説明する」とし、セミナーの延期を勧めた。しかし杉山さんは、「受講生との約束なのに、私の都合が悪いからといって取り消すわけにはいかない」とし、「飛行機が駄目だったら、船に乗ってでもソウルへ行く」と話した。現代デパート側は、苦心の末、氏の意思を尊重してセミナーを開催することにした。
杉山さんは同日、「日本人として心が痛み、複雑な気持ちだが、現代デパートとの初の交流を約束した講座が優先だ。受講を申し込んだ人がいなかったら別だが、待っている受講生がいるなら来るのが当然だと思った」と話した。氏は、「西武デパートの本店から羽田空港まで通常1時間ぐらいかかるが、電車が遅れ、タクシーと電車を乗り継いで来たので、羽田まで2時間以上かかった」と当時の状況を伝えた。
同日、14人の受講生は杉山さんと共に2時間、クリームパンを作る実習を行った。受講生のキム・ヨンジュさんは、「日本のパン作りが習いたくて受講を申し込んだが、地震のニュースを聞いて、当然セミナーがキャンセルされると思っていた。クリームパンの作り方はもちろん、最悪の状況でも最善を尽くす日本人の責任感から多くのことを学んだ」と話した。
ペクセンター長は、「デパートのカルチャーセンターを通じ、韓日間の文化交流を初めて推進したが、あまりにも深刻な災難状況なので、日本側にセミナーを延期しようと言ったが、地震と津波による災害のなかでも、セミナーの約束を守った杉山先生に尊敬と感謝の意を伝えたい」と話した。
今月末には、日本の有名フローリストの佐々木直喜さんが来韓し、「韓日文化交流」の講義を進める予定だ。
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