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フランスが最後まで手放さない贅沢、「フォアグラ」

フランスが最後まで手放さない贅沢、「フォアグラ」

Posted December. 29, 2025 09:43,   

Updated December. 29, 2025 09:43


 

クリスマスと年末になると、フランスの食卓に欠かせないものがある。牡蠣、スモークサーモン、そしてフォアグラだ。トリュフ、キャビアと並び「世界三大珍味」とも呼ばれるフォアグラは、特別な日に味わう食べ物だ。「トリュフは自然がつくった価格に従い、キャビアは時間がつくった価格に従うなら、フォアグラは人間が意図してつくった価格に従う」という言い回しがある。だからだろうか。フランスは2006年、フォアグラを国家の美食文化遺産に正式指定し、「最後まであきらめない贅沢」と位置づけた。

フォアグラの起源は、紀元前2500年頃のエジプト、ナイル川流域の壁画にまでさかのぼる。そこには、ガチョウに餌を強制的に与え、肝臓を肥大させる場面が描かれている。その後、ローマ人はイチジクを食べさせてガチョウの肝を太らせ、これを「イエクル・フィカトゥム(iecur ficatum)」と呼んだ。今日、フランス語で「肝臓」を意味する「foie(フォア)」の語源はここにある。当時フォアグラは、権力と富を享受する階層だけが口にできる食べ物だった。

中世以降、フォアグラはカトリック文化の中で、禁欲の終わりを告げる祝祭の食として定着した。秋にガチョウを屠畜し、冬の間、肝をテリーヌ(肉や内臓をすりつぶして固めたもの)の形で熟成・保存して味わう食文化へと発展する。19世紀に入ると、ブルジョワ階層の食卓に上り、「普段は食べない特別な料理」として認識されるようになり、自然にクリスマスの定番となった。

現在フランスで生産されるフォアグラの多くは、南西部ペリゴール地方の「鴨のフォアグラ」だ。フランス人が日常的に口にするフォアグラでもある。一方、アルザス地方の「ガチョウのフォアグラ」は、よりクリーミーで繊細な食感から高級品とされ、生産量が少ない分、価格も高い。フランスは世界最大のフォアグラ生産・消費国で、年間1万8千トン以上を生産する。1人当たり年間消費量は約120グラムに達する。米国が高級レストラン中心に後を追い、中国でも消費が急増している。

フォアグラを巡る倫理論争は絶えない。フランスの俳優ブリジット・バルドーは引退後、フォアグラ生産の全面禁止を訴え、これを「フランス美食の恥」と批判してきた。ボルドー、モンペリエなど一部の都市は公式行事での提供をやめたが、ストラスブール行政裁判所は、欧州連合(EU)の動物福祉条項にもかかわらず、生産禁止は不可能だと判断した。伝統と倫理が衝突する地点だ。

それでも現実は別だ。鳥インフルエンザの拡散で2023年まで減少していた生産量は、ワクチン接種後に回復基調に入り、2024~25シーズンには販売量が再び増えた。調査では、フランス人の90%以上が年に1回以上、フォアグラを食べるという。

フォアグラを「きちんと」楽しむなら、ブリオッシュに薄く切ったフォアグラをのせ、フルール・ド・セルをふり、イチジクやタマネギのコンフィを添えて、ソーテルヌのワインと合わせるのが定石だ。冷やして食べてもよいが、料理人が最も愛するのは、強火で片面を30~40秒焼く「ポワレ」だ。表面はカラメル状に香ばしく、中は口の中で溶ける。その瞬間、フォアグラは今なお、フランスが手放せない贅沢であることを証明する。