02年、ソウルのある大学病院で、ガソリンを積んだLPG車両が病院に突進し、大事故が起こりかけたことがあった。この病院で、手術の途中、やむをえず足を切断することになった患者が、病院に不満を抱いて起こしたのだ。昨年、地方のある総合病院で、糖尿病を患っていた50代の男性が、前立腺がんの組織検査を受けた後、敗血症の症状のために手足を切断した。検査の結果、前立腺かんではなかったが、組織検査で手足を切断することになった患者の家族は、医療事故だと主張した。病院側は、教科書どおり処置したため過失はないと反論した。
◆これまで、医療事故が起これば、患者の家族が病院で暴れて示談金を受け取ったり、民事訴訟になる方法しかなかった。被害者が病院でデモをし、医者に暴力をふるえば、病院は過失の如何に関係なく、イメージに大きな傷がつく。01年に585件だった医療訴訟は、09年には911件と、8年間で2倍近く増えた。訴訟になれば、患者の家族と医療スタッフいずれも、金銭的に損害を受け、精神的に疲弊する。医療関連訴訟の唯一の勝者は弁護士だけだという声もある。
◆11日、「医療事故被害救済および医療紛争調停などに関する法」が国会を通過したことで、このような悪循環の輪を断ち切ることができそうだ。88年に医療紛争調停法の必要性が提起されたが、医師団体と市民団体の対立で、廃棄と上程が繰り返えされ、23年経ってやっと処理されたのだ。新設される韓国医療紛争調停仲裁院に医療事故の被害者が救済を申請すれば、専門医や法曹関係者、消費者団体で構成された医療事故鑑定団が調査を行う。これをもとに、医療紛争調停委員会が調停案を提示し、両者が調停案を受け入れれば、医師は刑事処罰を受けない。生命が危険だったり障害が起きたりした場合は例外だ。不服な場合は、訴訟を起こすことになる。
◆過失の立証を患者がするのか医師がするのかが重要な争点だったが、論議が大きい「過失立証責任」の規定を除いたことで、法案通過が可能となった。両者いずれも譲れない部分だったが、第3の機構が事故を調査をするだけでも、社会的コストを大いに減らすことができるようになった。何よりも、医療紛争の調停の対象に外国人も含まれており、医療観光の障害の一つが取り除かれた。与野党の合意で通過した同法が、韓国医療文化を先進化し、海外の患者の誘致に役立つことを期待する。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員shchung@donga.com






