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黄長鎏暗殺組、北朝鮮に残した娘のことで涙

黄長鎏暗殺組、北朝鮮に残した娘のことで涙

Posted July. 02, 2010 07:07,   

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重大な指令を受ける数日前、上官は彼にベンツを与えた。遠く離れて住んでいた妻と5才になる娘を呼び、平壌(ピョンヤン)市内の観光をさせた。彼は、娘の明るい笑顔を見た。そして、心の奥からこみ上げてくる涙を抑えた。別れの時間が近づくと、最初で最後のプレゼントを娘に渡した。これまで一度も買ってあげられなかったきれいな服一着とおもちゃ一つ。そして、背を向けて考えた。「南朝鮮での任務が成功しようが失敗しようが、私は再び妻と子どもの顔を見ることができないだろう」。南派訓練を受けた招待所に戻る道は遠かった。招待所に到着するまで、北朝鮮人民武力部偵察総局所属の工作員ドン・ミョングァン被告(36)の涙は止まらなかった。

「裏切り者の黄長鎏(ファン・ジャンヨプ)の首を取れ」という指令を受け、偽装脱北した容疑で逮捕・起訴されたドン被告とキム・ミョンホ被告(36)に、1審で懲役10年が言い渡された。1日、ソウル中央地方裁判所刑事合議24部(趙漢暢部長判事)は、「金被告らに別の選択の余地はなく、残された家族の身を心配するなど、人間的な一面も見せた」とし、このように宣告した。検察は懲役15年を求刑したが、裁判所は彼らの人間的な姿を酌量し、量刑を下げた。

●「家族のことを考えると涙」

5月初め。17日間、国家情報院の取り調べを受け、ソウル中央地検公安1部に送検された金被告とドン被告の顔は、こわばっていた。椅子に背筋を伸ばし座り、警戒を緩めなかった。検察は、1ヵ月間、彼らの固まった心を解くことに努めた。

「検事さん、そこのカップラーメンを私にもください」。毎日、取り調べの途中に、一緒に食事をし、彼らは徐々に心の扉を開き始めた。検事がカップラーメンを食べる姿を見ていた彼らが、頼んだ。カップラーメンを食べた後、「これまでここで食べたもので、ラーメンが一番おいしい」と話した。韓国の生活を正しく伝えるために、彼らに映画やミュージックビデオを見せた。「あの人が、この人ですね」。彼らは、有名なグループのメンバーの1人を指差し、記憶力を自慢した。

しかし、彼らは、家族に関する質問には、敏感に反応した。家族に対して申し訳ないという気持ちと懐かしさを表現しながらも、家族が安全に過ごしているということを堅く信じようとした。「夢に5才の娘が出てきました。自分を置いていった父親を一生恨むと言っていました」。金被告は、目を赤くした。しかし、家族の安否を心配する検事の質問には、「私たちの祖国は、そのような所ではない。私たちの任務が成功しようが失敗しようが、祖国は家族を守ってくれるだろう」と声を高めた。

彼らの人間的な姿に、検察も心を開いた。先月23日、検察は求刑論告で、「彼らは優れた明晰さ、純真無垢なユーモア感覚で、検事らを驚かせた。南北が分断した状態で、互いが互いを警戒し、敵対せざるを得ないことに対し、残念な思いを彼らも共感しただろう」と話した。

●「感情を持ったターミネーター」

しかし、彼らの北朝鮮に対する無条件の忠誠心は、恐ろしいほどだった。2人は、取り調べで、金正日(キム・ジョンイル)総書記の名前が出るとすぐに不動の姿勢を取るなど、盲目的な忠誠心が身についていた。彼らは、「逮捕は裏切り」という表現を使った。2人は、「私たちは逮捕され、祖国を裏切ったが、祖国は私たちを見捨てないだろう」と話した。

彼らは捜査で、「今でも外に出られれば、(黄長鎏元労働党書記を殺害せよという)任務を果たす。韓国情報機関を甘く見て準備を完璧にしなかったことが、今でも悔やまれる」と話した。捜査機関が、最も憂慮するのもこの部分だ。検察関係者は、「人間的な一面を持ちながらも、閉鎖的な社会で、多様な価値観に接することができない彼らに憐れみを感じた」と述べ、彼らを「感情を持ったターミネーター」と表現した。



ceric@donga.com baltika7@donga.com