米ワシントンのホワイトハウスから直線距離で約900メートル離れた観光名所「ホロコースト博物館」で、白人至上主義者が銃を発砲し、警備員1人が死亡、犯人は重体となった。バラク・オバマ政府発足以来、極右主義者のテロを憂慮してきた米国社会は、国内人によるテロに警戒を強めている。
●ホワイトハウス近くで白昼テロ
10日午後12時50分頃(現地時間)、ホロコースト博物館の入り口から入ったジェームズ・ボズ・フォンブラン容疑者(88)が、突然警備員に発砲し、銃撃戦となった。39才の黒人警備員が死亡し、1人は重傷を負った。フォンブラン容疑者は拳銃で撃たれて重体だ。
第2次世界大戦時にナチス・ドイツに虐殺された犠牲者を追悼する同博物館は、ホワイトハウスから南に5ブロックほど離れており、1年に200万人が訪れるワシントンの観光名所だ。事件当時、博物館には見学の生徒ら数百人の入館者がいた。事件発生直後、警察特攻隊とヘリコプターが緊急出動し、博物館周辺を封鎖した。警察は、フォンブラン容疑者のノート・パソコンから、大聖堂など10ヵ所のワシントン市内の名所リストを発見し、爆発物探知チームを送った。
●白人至上主義者、過去にも重武装テロ未遂
フォンブラン容疑者は、人権団体と捜査当局が長く要注意人物としていた白人至上主義者だ。約30年前に離婚し、メリーランド州アナポリスで1人で暮していたフォンブラン容疑者は、ユダヤ人と黒人を攻撃するウェブサイトを運営し、オンライン書籍の執筆などを通じて、ホロコースト捏造説など、多くの陰謀論を流布してきた。
81年には、連邦準備制度理事会(FRB)メンバーが会を開く予定の連邦政府の建物にリボルバー拳銃と凶器で武装して押し入り、警備員に銃を向けたため逮捕され、6年間服役した。当時フォンブラン容疑者は、「FRBが、ユダヤ人に米国の金を掌握させた」とし、「ポール・ボルカーFRB議長を拉致する計画だった」と主張した。フォンブラン容疑者は出所後、「黒人陪審員とユダヤ人弁護士、ユダヤ人判事が私を監獄に送った」と恨んできた。一時、アイダホ州ハイデンにある白人至上主義者の居住地域に住んでいた。
●オバマ政権後、極右主義の不満が犯罪に
フォンブラン容疑者が、ホロコースト博物館を犯行の場所に選んだのは、オバマ大統領が5日、ドイツ訪問の際、ブーヘンヴァルト強制収容所を訪れ、ユダヤ人虐殺被害者の冥福を祈ったことも影響したようだ。初の黒人大統領の就任後、白人至上主義者や人種主義者がテロを企図している兆しはまだない。
しかし、中絶、同性愛者の結婚、BS細胞研究など、進歩と保守の対立が激しい事案が社会的争点となり、極右主義者の焦燥感と不満が高まっているという分析が出ている。先月31日には、妊娠後期の中絶をする病院を運営して批判を受けていた医師が、中絶反対論者に殺害された。米国の憎悪犯罪は、00年の602件から昨年には926件に大きく増加した。
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