韓国内一部の化粧品に「アスベストに汚染されたタルク(滑石)」が使われたことに対し、消費者だけでなく、製造会社も我先に訴訟戦に突入している。しかし、アスベストによる被害は潜伏期間が長く、場合によっては数十年もかかり、直ちに人体への被害を立証するのは難しく、訴訟が成立するかどうかなどを巡り、議論が起きている。
●消費者、「1世帯=60万ウォンの賠償を」
インターネット・ポータル・サイト「ネイバー」のコミュニティ、「アスベスト・ベビー・パウダーによる被害者の集団訴訟の会」は最近、1回目として被害者46人を集め、国やパウダー製造会社、タルク供給会社などを相手に、ソウル中央地裁に損害賠償の請求訴訟を起こしたと14日、明らかにした。子供1人と親1人が含まれ、計23世帯が参加し、賠償額は1世帯=60万ウォンと決めた。同会の金孝彦(キム・ヒョオン)弁護士は、「製造会社は、アスベスト・タルクについて告知を行っておらず、政府は管理監督をおろそかにしており、消費者らの精神的なショックなどを考慮し、賠償額を決めた」とし、「アスベスト・パウダーの人体への被害は直ちに現れるものではなく、最小限にした金額だ」と明らかにした。
環境運動連合も8日、ソウル鐘路区(チョンノグ)の事務所で、10人あまりの被害者を集め、1回目の被害者の会を開いた。また、ホームページで被害事例を収集後、検察にパウダー製造会社やタルク供給会社を告発した。15日には、国会・小会議室で複数の市民団体と共に、「アスベストによるショックを巡る緊急討論会」を開く。環境運動連合の関係者は、「毎日、数十件の被害事例が寄せられており、近く集団民事訴訟を起こす計画だ」と語った。
●製造会社、「販売中止命令を撤回せよ」
製造会社各社も、国を相手に反撃に乗り出している。韓国製薬協会は14日、「アスベスト・タルク」と関連し、食品医薬品安全庁(食薬庁)を相手に共同訴訟に乗り出す企業を集め、計24社が今回の訴訟に参加したと明らかにした。これらの会社は近く、食薬庁を相手に、「アスベスト・タルク製品の回収及び廃棄命令」の撤回を求める仮処分申請を出す計画だ。
ハンリム製薬はすでにソウル行政裁判所に、食薬庁を相手取って、「販売中止及び回収命令」の取り消し訴訟を起こしている。同社は、「食薬庁が発表したタルク使用医薬品は現在、流通されていないか、流通される恐れはない」とし、「それが分かっていながら、事前予告無しに、製品回収や販売中止に乗り出し、膨大な被害を被らせた」と主張した。製薬業界では、製品の損害額や保険給与の中止、企業イメージの悪化などをあわせれば、業界の被害額は1兆ウォンを上回るとみている。
●「被害立証は難しい」VS「精神的な被害は補償すべき」
消費者と製造会社間の法律的な焦点は、大きく3つ。△政府や製造会社が、アスベストに汚染されたタルクについて、いつから、どの程度まで知っていたか、△アスベスト・タルクの危険性を防止するための措置は、なぜ遅れたのか、△消費者に身体的、精神的、財産上の損害を与えているかである。
訴訟に参加するためには、消費者らは該当製品を購入した証拠(領収書)や、製品を使用後にアトピーや皮膚疾患のような副作用が起きたことを裏付ける診断書を自力で集め、提出しなければならない。直ちに直接的な人体被害を立証するのは難しく、訴訟では精神的な被害補償問題が優先的な焦点となる可能性が大きい。昨年発生した、大手企業による個人情報の流出と関連した集団訴訟では、20万〜70万ウォン台で被害補償が行われた。
アスベストが検出されたベビー・パウダー製造会社、ボリョン・メディアンスの法律代理人である法務法人「世宗(セジョン)」の朴𨥉善(バク・ギョソン)弁護士は、「アスベスト・タルクによって実際、被害が起きてこそ賠償訴訟が成立する」とし、「国や製造会社側の違法性や消費者の被害発生を確認するのは容易なことではなく、法的な争いが激しくなるものと予想される」と語った。
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