全羅北道(チョルラプクト)の八公山(パルコンサン)から、全羅南道(チョルラナムド)と慶尚南道(キョンサンナムド)の道境を成して、光陽(クァンヤン)湾へと流れ込む蟾津江(ソムジンガン)は、風光明媚で、公害に汚染されていない山紫水麗の河だ。河の長さ(212キロメートル)で見ても、洛東江(ナクトンガン)、漢江(ハンガン)、錦江(クムガン)に続く4大河川である。蟾津江一帯の人口が少なく、地域的に考慮したため、ずっと短い栄山江(ヨンサンガン、115キロ)が、4大河川の整備事業に編入された。
鄭鍾煥(チョン・ジョンファン)国土海洋部長官は最近、4大河川整備マスタープランを5月に発表する時、蟾津江を含む案を検討すると明らかにした。鄭長官は、「蟾津江は、水量も比較的多く、保存状態のいい河川だ」と言い、河川に親しむことのできる空間をつくる計画だと明らかにした。名実ともに4大河川である蟾津江が、遅ればせながら国土部のマスタープランに含まれることは幸いであり、当然のことだ。蟾津江をうまく整備すれば、智異山(チリサン)を挟み、華厳(ファオム)寺(全羅南道・求禮)、雙磎寺(サンゲ)寺、燕谷(ヨンゴク)寺(慶尚南道・河東)といった文化財とともに、世界的な観光名所になれる。
故・朴景利(パク・キョンリ)氏の大河小説『土地』の舞台である平沙里(ピョンサリ)村は、蟾津江の辺に位置する。『土地』には、河東の入り江を通り過ぎた木船が、蟾津江を上って平沙里の渡し場に着く様子が描かれているが、河床の堆積と陸上交通の発達で、蟾津江の水上運送が姿を消して久しい。しかし、智異山の渓谷を流れる水が蟾津江に流れ込み、1級水にだけ棲息する鮎が泳ぐ姿が見渡せる。
蟾津江の整備事業は、美しい景色ときれいな水を保存する環境にやさしい空間にすることに力点を置かなければならない。「蟾津江」の詩人・金龍澤(キム・ヨンテク)は、「日が暮れれば、暮れた川辺に/米飯のようなシロツメクサの花/炭のようなシウンエイの花を頭にのせて/地図にもない町の川辺」と詠った。このような自然を台無しにするぐらいなら、整備事業はしないほうがましだ。趙英男(チョ・ヨンナム)の歌、「ファゲチャント」に出てくる歌詞のように、慶尚道と全羅道を横切る蟾津江を「世界の名河川」に整備するなら、国民のプライドを高め、地域の結束と立ち遅れた一帯住民の所得の増大のためになるだろう。






