1990年代、北朝鮮に最も多く食糧を人道的に支援してきた米国が、05年以来3年ぶりに北朝鮮への食糧支援を再開する。
来月から1年間支援される50万トンは、99年以降の年間基準で最大規模だ。
米国務省のショーン・マコーマック報道官は17日(現地時間)、「今回の支援は、純粋に人道的次元であり、核問題解決に向けた6者協議とは関係がない」と述べた。
しかし、米朝核交渉と緊密に連携した食糧支援の過程を見ると、6者協議に対する補償またはインセンティブとしての政治的性格が強いと見受けられる。
この過程で、「分配の透明性」の確保は、多少後退したようだ。
▲対北朝鮮食糧支援、米国が活動再開〓米国は90年代、最悪の経済難を経験した北朝鮮に、世界最大の人道的食糧を支援した国家だった。
米国は、国際機関である国連世界食糧計画(WFP)などを通じて、96年の1万9500トンを皮切りに04年まで、年間最高69万トンの食糧を支援した。
しかし、核問題をめぐる米朝関係の悪化の中、北朝鮮が05年にWFPの職員を追放し、06年にミサイル発射と核実験を強行したことで、支援が中止された。
昨年、北朝鮮食糧危機説が再び浮上すると、米朝両国は食糧支援再開問題を協議してきた。今年3月から、米政府の高官が相次いで韓国と北朝鮮を訪問し、食糧支援交渉が勢いに乗っている。
▲6者協議の進展に向けた経済的手段〓今回の食糧支援には、政治的意図が強く滲んでいる。任期内に核問題の進展を望むブッシュ米大統領が、北朝鮮との交渉に食糧支援をてことして使った面が強い。
統一研究院の徐載鎮(ソ・ジェジン)北朝鮮研究室長は、「米国は過去、中国政府が人権問題を改善するよう誘導するうえで、人道的支援を活用した。今回も、北朝鮮の非核化という政治的目的に向けて、人道的支援を標榜した経済的手段を適切に活用している」と説明した。
実際に、米国の対北朝鮮食糧支援の過程は、米朝核交渉の進展に徹底して連動している。3月13日に、スイスのジュネーブで米朝核交渉の突破口が開かれると、米国は「50万トン食糧支援説」を公式化し、国務省の高官を韓国に送って、北朝鮮の食糧難に関する資料を収集した。
4月8日、米朝シンガポール協議が成功裏に終わると、WFPは全世界に北朝鮮食糧難の危険性を警告した。
米国務省は、ソン・キム韓国課長が10日、約1万8000ページにのぼる北朝鮮の核に関する書類を持って、板門店(パンムンジョム)を越えた後、北朝鮮に対する食糧支援計画を最終発表した。
▲分配の透明性では一歩譲歩〓90年代以来、米国の北朝鮮に対する人道的支援を研究してきたマーカス・ノーレンド(米ピーターソン国際経済研究所上級研究員)、スティーブン・ハガード(サンディエゴ・カリフォルニア州立大学太平洋国際関係大学院教授)博士は、著書『北朝鮮の選択』(06年)で、北朝鮮当局が援助品のかなりの量を権力層に配分するか、市場での販売に転用したと主張した。
ワシントンポストは17日付で、米国と北朝鮮がこのような憂慮を払拭するために、約65人の外部モニタリング要員を配置することで合意したと報じた。北朝鮮が、食糧支援の主体であるWFPに任意のモニタリングを許可し、倉庫およびその他の施設に接近できるよう許可したという。
しかし、米国は当初、北朝鮮に食糧を直接支援し、モニタリングも直接実施すると主張したが、交渉の過程で、WFPによる間接支援方式に後退した。また、WFPが韓国語ができるモニタリング要員を配置することは許可するが、韓国人出身(ethnic Korean)は国籍を問わず許可しないという北朝鮮の主張を受け入れたという。
国家安保戦略研究所のチョン・グァンミン上級研究委員は、「過去と大きく変わらないモニタリング方式では、支援された食糧が軍隊などの権力者に転用される問題を防ぐことはできない。むしろ今回の食糧は6者協議の協力への見返りというのが正直なところだろう」と話した。
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