Go to contents

[オピニオン]匿名の寄付

Posted July. 13, 2007 07:46,   

白髪交じりの初老の女性が一ヵ月半前、高麗(コリョ)大学医学部付属病院を訪れ、土地文書を持ち出した。ソウル江南区清潭洞(カンナムグ・チョンダムドン)にある時価400億ウォン相当の土地の文書だった。彼女は、「数回診療を受けて同病院と縁ができた、研究と診療に役に立てればこの上ない幸せだ」と話した。名前の未公開を条件にしてほしいと頼んだ。「善行が返って災いになって家族と友人たちを失うようなことがあってはならないと思うから」と。

◆「家族と友人たちを失うのでは」という匿名寄付の理由にはいろいろうなずけるようなものがある。多岐にわたる想像ができる。一生貯めてきた大きな財産を、教育事業や社会事業に遣う慈善家のうち、子どもや親戚と激しい揉め事を起こす場合が少なくない。相続権者たちにとっては、「余計なことをされずに亡くなられると、そっくり自分たちの手に入る財産なのに」と、もったいない思いに駆られがちだ。親戚たちは「私たちも生活が厳しいのには一銭もくれずに、赤の他人のためそんなに大金を使うのか」と悔しい思いをするかもしれない。

◆いずれにせよ、匿名であろうが実名であろうが、このような巨額の寄付はやはり誰もができる選択ではない。なお、個人が出す大学寄付金としては韓国内の史上最大額だ。李という名字だけが知られているこの60代の女性は、教育界に携わったのち、運送業で数百億ウォン代の財産を築いた母親から遺産を受け継いだという。うまい金の使い方は、よく稼いだりきっちり管理したりするよりも、ずっと至難の業なのだ。

◆李氏は、母親から「他人が面白いと言っているのも自分でやってみればつまらないものだし、いくらよいものもありふれたものになると、もはや物珍しくも何ともなくなる。金持ちの家に生まれ、生活には事欠くことなかったから、財物にあまり執着せず、常に人を助けてやることだ」と教わってきたという。まず、その母親もすばらしい人柄の持ち主であるに違いないが、母親の遺産を切り盛りしてきっちり管理し、そっくり全額を社会に還元した娘の「実践」も並大抵のものではない。米国の鉄鋼王であるアンドリュー・カーネギーは「血も涙もない人」と非難されながら稼いだ莫大な財産で社会貢献活動を行い、「金持ちのまま亡くなるのは恥ずかしいことだ」という名言を残している。

許文明(ホ・ムンミョン)論説委員 angelhuh@donga.com