ある60代の定年退職者は、ソウル・江南区狎鴎亭洞(カンナムク・アプグジョンドン)の分譲マンションを購入してから27年間、そこで暮らしていた。彼の固定収入は月200万ウォンだが、今年から月100万ウォンを上回る税金を保有税として取られるようになり、生計が立てられなくなった。
高齢者たちが子どもや長い間付き合っていた友人や隣人、そして通っていた教会や寺から離れて縁故のない街に引っ越すのは、大きなストレスを伴う。中年層は子どもの学校や職場のため、引っ越しはもっと困難になる。
税金で給料をもらっている公務員が一気に保有税が3倍に急騰し、途方に暮れている国民に対しての慰みの言葉はおろか、「引っ越せばいい」とあざ笑うような態度で暴言を浴びせてはいけない理由だ。
権五奎(クォン・オギュ)副首相兼財政経済部長官が、「マンションを売って盆唐(ブンダン)地域あたりへ引っ越せば、かなりの現金を手にすることができる」と発言したのにも同じことが言える。
盆唐もバブルセブン地域(マンション価格が急騰し、政府が不動産関連規制を設けている7つの地域)で、総合不動産税対象者が多い。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領がこの間、「総合不動産税のため引っ越す場合は、売買価格の10%を譲渡税で取られてもかなりの大金が残る」とした発言を、そのままオウム返しした「忠誠発言」だ。それは、まるで映画館で出口をふさいで置いて「火事だ」と叫ぶような人たちを連想させる。
総合不動産税の対象は不動産で一儲けした人、としていた当初の趣旨は失われた。今年、総合不動産税が課せられた人の中には、1戸の住宅しか保有していない人が36.5%にも達する。
バブルセブン地域ではない、一山(イルサン)洞、仁川(インチョン)、釜山(プサン)、大田(テジョン)、大丘(テグ)、光州(クァンジュ)などの地方都市でも、総合不動産税対象者が増加した。
対象者の31.1%が公示価格6億ウォン以上7億ウォン以下に集中している。一生懸命に働き、1戸の住宅を所有している中間層に「投機を抑えるための」懲罰的性格の税金が課せられたわけだ。税金には所得と富の再分配という機能があるが、納税者が納めきれない金額では、収奪であり、社会主義国家の政策と変わりがない。
税金の無駄使いも国民の怒りを招いている。過去史委員会が今年、9154件を調査するといって編成した予算だけで119億ウォンだ。これでも足りなくて職員を130人も増やすとしている。
70億ウォンを投じて忠清南道燕岐郡(チュンチョンナムド・ヨンギグン)の荒野に、行政都市広報館と国家均衡発展広報館を建てたが、来訪者数は1日30人に過ぎない。それもほとんどが関係公務員や近隣の住民だという。この社説でこれまで指摘してきた税金の無駄使いの例は、一々取り上げるには紙面が足りないほどだ。
政府が重過ぎる税金を課しておきながら、「悔しかったら家を売ればいい」と屁理屈を並べても、大統領の任期切れまでの日数を数えている国民が多く、市場では不動産政策の影響が出ていないのだ。






