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[社説]なぜ今、改憲なのか

Posted January. 10, 2007 07:24,   

盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が任期末に「改憲」という切り札を持ち出した。昨日、突然の対国民特別談話を行い、5年単任制の大統領任期を4年に短縮する一方、1回に限って連続再選を認める「任期4年の連続再選容認」への改憲を提案したのだ。権力構造だけを変えるいわゆる「ワンポイント改憲」である。

盧大統領は、改憲が2002年の大統領選挙当時の公約だったことに言及した上で、改憲発議権を行使すると話した。李炳浣(イ・ビョンワン)大統領秘書室長は、「4、5月以前に終われば(大統領選挙の日程に)支障はきたさない」と述べて、近いうちに発議する考えであることをほのめかした。ついに盧大統領が「改憲政局」の幕を切って落とした格好となった。

しかし、私たちは「なぜ、今なのか」という根本的な疑問を抱かざるを得ない。

盧大統領は談話で、任期4年・連続再選容認の改憲について「国民のコンセンサスはかなり得られている」と前提した。しかし、様々な世論調査によると、連任制を含む重任制への改憲に賛成する国民の割合は35〜40%程度に止まっている。それに、「次期大統領の任期中に進めるべきだ」という意見が、「現大統領の任期末での改憲」への支持を大幅に上回っている。

1987年、長期執権を防ぐために作られた現行憲法の改正をめぐる議論が必要であることは認めるが、時間に追われた手抜き改憲に終わることや政略的カードに利用される可能性への警戒心があるためだ。

しかも、学界や政界では昨年初頭から「改憲議論をするなら、今から急ぐ必要がある」という声が多かった。盧大統領が改憲を任期中の課題と考えていたならば、昨年からでも与野党や学界などが加わる改憲推進機構作りに急ぐべきだった。しかし当時、盧大統領は「制度は重要ではない。憲法より重要なのは政治文化だ。積極的に改憲を主導することはできない」と述べていた。その後、4ヵ月以上も政界を揺さぶった「大連政」を提案したのだ。

盧大統領は「単任制が責任政治の妨げになっている」と主張するが、これも国民を導き誤る余地が大きい発言だ。「大連政」を提案した際、「円滑な国政運営ができない理由」として巨大野党による国会支配を挙げたのと同様の理屈である。

大統領制の本元である米国では「現行の任期4年の重任制は、次の選挙準備に気を取られるため、所信のある国政運営を困難にする」という理由で「任期6年の単任制」への改正運動まで見られている。大統領と国会での最大政党が異なる政党である場合、国政運営の効率性が高くなるという研究結果もある。それなのに、盧大統領はいきなり、国政失敗の責任を「制度のせい」にしているのだ。

盧大統領は「政略的思惑はなく、どの政治勢力にも有利、または不利に働くようなカードではない」と述べているが、大統領の「本音」が疑われる理由は一つや二つではない。

改憲議論の持つ爆発性を考えると、他の政治的・政策的議題は短くても3〜4ヵ月後に見舞わされる恐れがある。大統領の失政の責任や、与党の支離滅裂な態度の問題性は薄れる一方、野党の有力大統領候補らの動きも国民の関心から遠ざかるようになる。与党には絶対的に有利で、野党には絶対的に不利な状況になりかねない。

にも関わらず、盧大統領は「責任感を持って国政運営に取り組んでいる人なら、この改憲を支持するのが筋だ」と述べ、「次期政権での改憲」を支持する人々にまで「筋違いの勢力」のレッテルを貼ろうとしている。

ワンポイント改憲をするとしているが、いざ議論が本格化すれば、領土条項など敏感な案件をめぐる論議も広がり、法で定められた日程通りにことが進められるかどうかも未知数である。そのため、政界の内外から改憲提案について「政権継続のための勢力図かく乱の第一歩」と解釈する声があがっているのも無理ではない。

今、大半の国民が盧大統領に求めているのは、最後の13ヵ月だけでも政治ゲームから手を引き、民間経済の活性化や韓米同盟の復元及び韓米自由貿易協定(FTA)締結といった国家的課題に専念することだ。ところが、大統領は今年の国政運営の計画を発表する「年頭会見」を後回しにしてまで、「改憲」という政治的・政争的議題を投げかけた。