藪の中からの暗い影。オオカミの群れが徘徊する間に陰湿な音がする。「弱ければ、米国に害を及ぼすやつらを呼び入れる」。ブッシュ米大統領がジョン・ケリー民主党候補を攻撃する政治広告だ。ケリー候補も黙っているはずがない。機関銃が乱射されるなか、イラクの武装勢力が負傷した米軍を引きずっていく激しい広告だ。「今も米国人は拉致されて、人質につかまって、首切りにされている」というナレーションだ。2004年米大統領選挙を貫くテーマは恐怖と言っても過言ではない。
◆ハーバード大学神経科学者のダニエル・シゲル教授は恐怖が理性を麻痺させると言った。恐ろしさを感じれば左側の脳に刺激が不十分で、論理的思考が停止するというのだ。そばでいくら論理的に説明してもだめだ。脳はすでに何か頼るようなものを捜す状態だ。話す内容よりはその声のトーンにもっと気を使う。論理的なケリーよりブッシュがどもりながら、唾を飛ばして話す音に米国の一般国民が熱狂するのもそのためだ。「お父さんここにいるよ。私がいるから心配しないで」と言うように情緒的な安定感を与えるという話だ。
◆オサマ・ビン・ラディンが恐怖のメッセージをビデオテープに送る前、実際にビン・ラディンを広告に出したのもブッシュ側だった。共和党の支持派である「米国のための進歩」グループは、彼の写真とテロリストたちの姿を入れて「(柔弱な)ケリーがこの狂信的殺人者たちに対抗できると思うか」と脅かした。伝説的なアンカーだったウォルター・クロンカイトはCNNに出て「頭の良いホワイトハウスの政治顧問カール・ローブがこの事件を作ったのかもしれない」と言及した。テロと戦争中であることを呼び覚ますことで「戦争司令官」ブッシュを浮上させようとしたという陰謀説も出回る。
◆恐怖を武器にした政治広告に影響をそれほど受けなかったのは浮動層だとミシガン大学のテドブレド博士は言う。政党支持がはっきりしていて、候補に対してよく分かる「賢い有権者たち」がむしろ搖れるというのだ。一般的な通念とは違う研究結果だ。米国人たちが影響を受けようが受けまいが、問題は恐怖広告が見られなかった地球村の人々まで選挙後の米国が恐ろしくなるという点だ。ブッシュが大統領になっても、ケリーが大統領になっても、恐怖の世界が迫るのではないかと心配だ。
金順徳(キム・スンドク)論説委員yuri@donga.com






