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[オピニオン]枢機卿への献呈アルバム

Posted March. 18, 2004 23:05,   

職業柄、度々他人が書いた学位論文を受け取ることがある。大方、専門分野の修士・博士論文のため、「保管用」に止まるのが殆どであるが、論文の冒頭に書かれる「献呈辞」には、一度くらい目を通すことになる。恩師と両親、妻と子女、そして先輩や後輩、仲間に贈る感謝のメッセージである。学位の過程中、不意にこの世を去った田舎の父と、自分のために昼夜を問わず苦労した家内へのメッセージを目にすると、胸にジーンとくる感動を覚えることがある。

◆有史以来、数多くの詩、小説、音楽、美術作品の多くが、愛し尊敬する人々に捧げられた。宗教の経典もまた、神への敬畏と賛辞、そして献詩を集大成したも同然である。ノーベル賞を受賞した詩聖、タゴールの詩集「ギタンジャリ」は、神に捧げる詩であり「龍飛御天歌(ヨンビオチョンガ)、朝鮮時代に書かれた楽章のひとつ」は、王室に献呈された国策の頌祝歌であった。歌手のエリック・クラプトンは、愛する妻とアパートの墜落事故で亡くなった幼い息子のために「Wonderful Tonight」と「Tears In Heaven」を作曲した。河秀英(ハ・スヨン)の「妻に捧げる歌」は、韓国の全ての夫が妻に捧げた「償いの歌」であった。

◆ベートーベンは、民衆の救援者と信じていたナポレオンのために、交響曲第3番「英雄」を作曲したが、ナポレオンが皇帝に即位すると、フランスに贈るつもりだった楽譜の表紙を破り捨て、愛する女弟子のために「月光」を作曲した。ブラームスは、慕っていたシューマンの妻クララにピアノソナタとピアノ3重奏の曲を、メンデルスゾーンは、友人で後援者でもあったダビッドにバイオリン協奏曲を捧げた。甘く弱々しいショパンの「別れの歌」は、出世後忘れかけていた若き日の恋人に捧げた、即興演奏曲という話が伝えられる。

◆国内では、申重鉉(シン・ジュンヒョン)サンウリム、金グァンソクなど、時代をリードしたミュージシャンに対する献呈アルバムが発売されている。ところが、作曲家の鄭豊松(チョン・プンソン、62)氏が先日「国家の長老」を、守旧勢力として罵倒する現実をもどかしく思い、「金寿煥(キム・スファン)枢機卿へ」と題した献呈アルバムを出したのは、前者とは別のケースである。カトリック信者でもない鄭氏の、衷情と労をねぎらう一方で、多くの歌手が自分の人気管理とインターネットによるテロなどを理由に、アルバムへの参加を断ったため、作曲者が直接歌ったという話を聞いて、改めてこの時代の現実が悲しくなるばかりだ。

呉明哲(オ・ミョンチョル)論説委員 oscar@donga.com