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[オピニオン]ローマの休日

Posted June. 13, 2003 22:13,   

オードリー・ヘップバーンのよういアイスクリームをかわいらしく食べる女性がまたあろうか。映画「ローマの休日」では、ヘップバーンのキュートな姿も印象的だが、男主人公のグレゴリー・ペックの魅力もそれに劣らない。宮殿をこっそり抜け出した王女アンを「道で拾った」新聞記者ジョーに扮するグレゴリー・ペック。大特種の欲しさに正体を偽って王女をローマを案内することになるが、結局愛のために記事にすることをあきらめる、本当に男らしい男だった。

◆イタリア製のベスパスクーターに王女を乗せてローマを走り回りながら飛ばす豪快な笑い。「どうやって別れの挨拶をすればいいのかわからない」と涙ぐむ王女に、「気にしないで」となだめる優しさ。最後の記者会見で、愛、理解、憐憫、切なさなどを込めてオードリーを見ていたまなざしは世界の映画ファンを魅了させた。英国では王女に扮したオードリーが自由奔放なプリンセス・マーガレットに似ている。グレゴリーはプリンセス・マーガレットが好きだったピーター・タウゼントという男性に似ているという噂まで出た。記者との特別な縁があったのか、グレゴリーの二番目の夫人であるヴェロニカ・ハサニは彼をインタビューした記者だった。この美男俳優との初デートのために、他の俳優とのインタビューをすっぽかしたというのだから、愛のためには記事をあきらめた「ローマの休日」のグレゴリーと共通点がありそうだ。

◆彼が最も好きな配役が「ローマの休日」の新聞記者の役だったとすれば、俳優としての力量が最も輝いていた作品は「アラバマ物語」だった。彼が演技した人種差別に刃向かう正義の弁護士アディカス・フィンチの役柄は映画が描写した最高の英雄に指折られている。「われわれ法廷で全ての人間は平等に創造された」というせりふは、1960年代民権運動の現場はもちろん、今日でもたびたび引用される。彼が全身で示した強さと柔軟さの調和、名誉と知性、正義に対する核心と弱者に対する配慮などは、米国人が実際に社会で最も高く評価する徳目でもある。グレゴリー・ペックが演技がうまい俳優にとどまらず、「ハリウッドに残された真の貴族」と評価されたのも、このためだ。

◆逆境の中で苦悩しながら、人間として威厳を守る彼の映画の中のイメージは私生活でもそのまま投影された。「偏見と不公平さのために、自分のチャンスをものにすることができない人たちへの関心が多く」、ベトナム反戦デモに乗り出して自由主義的な政治信念を見せた、行動する俳優だった。その一方、俳優としての最高の義務は観客を楽しませ、プロ精神で演技することだと主張していたグレゴリーは、第2次世界大戦後安定を求めていた人々に信頼すべき紳士の象徴として印象つけられた。彼が「天国の休日」へと旅立ってしまった今となっては、誰が私たちの休日を楽しませてくれるのだろうか。

金順徳(キム・スンドク)論説委員



yuri@donga.com