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95年・妻子殺人事件の被告に最高裁が無罪判決 「証拠不足」が理由

95年・妻子殺人事件の被告に最高裁が無罪判決 「証拠不足」が理由

Posted February. 26, 2003 22:20,   

裁判所は判決で、「最も重要な間接証拠である崔(チェ)氏の死亡時刻に対する証明力が、改めて調査されたスイス法医学者の証言や火災実験結果で多いに減り、提出された証拠だけでは合理的な疑惑の余地もなく、李氏に対して有罪と判断することはできない」と明らかにした。

李氏は95年6月ソウル恩平区佛光洞(ウンピョンク・ブルクァンドン)のアパートで、妻と娘を殺害し遺体を浴槽に移して、アパートに火を付けた疑いで拘束起訴され、1審で死刑が言い渡されたが、2審では無罪判決を言い渡された。続いて最高裁判所は98年11月有罪趣旨で事件をソウル高等裁判所に差し戻し、ソウル高等裁判所は02年2月再び無罪を言い渡すなど8年間にわたる裁判での争いは悲喜こもごもだった。

李氏は弁護士を通じて、起訴した検察と国家に対して民事・刑事上訴訟を起こす意志を明らかにした。

▲核心争点〓同事件の核心争点は死亡時刻。95年6月12日午前ソウル恩平区佛光洞Mアパートの崔氏の家から、崔氏と娘(当時1歳)が遺体で発見された。午前8時20分ドアの隙間から煙が洩れているのを目撃した警備員の届け出で出動した消防隊員によって、午前9時40分頃崔氏と娘の遺体が発見された。この時検察と警察は、殺人現場で犯行を立証できる直接的な証拠を確保することはできなかった。

李氏の有無罪を判断できる重要な証拠として検察が提示したものは、死んだ崔氏の死斑(死体に現われる班点)と死体硬直(死体が硬直した程度)などを基に、「死亡時刻が、李氏が出勤した午前7時以前である可能性が高い」という国内の法医学者の鑑定結果だった。李氏が出勤する前に崔氏が死亡したとすれば、李氏に関わりがあるという事実を間接的に裏付けることができるからだ。

▲無罪の理由〓だが、01年2月に破棄差し戻しの判決を担当したソウル高裁は、「検察は間接的な状況証拠だけで李氏を犯人と断定した」とし、「李氏が犯人ではないか、という疑惑が生じるのは否定しがたいが、有罪と認めるには十分ではない」との立場を明らかにした。検察はこれに対して、コンピューター・シミューレーション実験結果を挙げて、火災発生時間が午前7時以前だと主張したが、判決は「正確ではない数値を代入して測定した演算結果で発火時間を測定するのは非常に恣意的だ」として、これを退いた。

さらに、当時の裁判ではスイス法医学者の証言を根拠に、死斑と死体硬直などで死亡時刻を推定するのは誤差の範囲が広く、変数も多いため、正確性が不足だという点を挙げ、「むしろ第三者による犯行可能性を排除することはできない」とくぎを打った。

▲判決の意味〓今回の判決は、犯罪事実に対する厳格な証明を求める「証拠主義」の原則を再確認した。判決は、間接証拠でも証明力があると判断されれば、犯罪事実を認めることができると前提したが、検察が提出した間接証拠だけでは犯罪の疑いを立証することはできないと結論付けた。

よって、崔氏を殺害した真犯人がだれなのかは迷宮入りとなった。夫の李氏は「無実の被告人」として救済を受けたが、どこかでぬけぬけと笑っている「犯人」を探し出さなければならない捜査機関の課題は未決で残されたのだ。



丁偉用 viyonz@donga.com