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[オピニオン]クジラと人間

Posted January. 09, 2003 22:35,   

新年になると、あいさつを交わし知人の幸せを願うのが人間というものである。「いつまでもお元気で」、「長生きしてください」、「明けましておめでとうございます」といった決り文句のあいさつは、多少陳腐な感じがするものの、いざその中に込められた相手の気持ちを察すれば、言われる側も心がなごむ。そうした相手の幸せを願うことばどおり、誰もがみな幸せになり、互いに助け合う社会になれば、それ以上良いことはないだろう。人間の善悪を測ることができるなら、温かい心の通い合う年の初めが一番善良な時期との結果が出るだろう。

◆まだ新年気分がぬけ切っていないためか、先日多くの新聞で報じられたニュージーランド発の外信写真の残映が、今でも目の前に焼き付いている。砂浜に打ち上げられ、口を大きく開いたまま苦しそうに息を切らしているたくさんのクジラたち。そして、濡れたシーツでクジラの体を覆い、バケツで海水を汲んできてはクジラの体にかけている人たち…。間抜けなクジラたちがまたもや集団自殺を図ったとして片づけてしまうには、あまりにも悲しい場面だった。浜辺の上で力尽きてぐったりとなっていた物言えないあの生物たちは、あれからどうなったのだろう。危機に陥ったクジラを救うための善良な人間たちの努力は、果たして成功したのだろうか。

◆写真の中のクジラは、コビレゴンドウ(pilot whale)という種類で、大人のクジラは体長5メートル、体重3トンまで成長する。その巨大なクジラが、ニュージーランドのスチュアート島に159頭も打上げられてきたのだから、その場面を撮った写真が世界中に送られるだけのことはあった。満ち潮に乗って浜辺に打上げられたクジラたちは、18時間も経ってからようやく人間に発見された。動物保護団体のメンバーや地元の住人ら80人あまりが駆けつけ、あわててクジラの体を濡らしながら満潮の時を待ち受けたが、彼らが再び海に帰すことができたクジラは39頭に過ぎなかった。120頭ものクジラが死んで行ったのだ。5年前には360頭ものクジラがこの島に上陸して死んだこともあるというから、クジラたちはスチュアート島を墓場とでも思っているのだろうか。

◆クジラが集団で浜に上陸して死んで行く理由は、まだ明らかにされていない。シャチ(killer whale)など、より強い敵に追われてそうなるという説、方向感覚の異常が原因だという説、中には個体の数のバランスを保つための集団自殺説に至るまで、さまざまな主張が出されているが、今のところ定説はない。理由はどうあれ、人間はクジラの死を放っておくようなことはしない。海に帰すことが不可能となった場合には、苦しむクジラを見かねて、ピストルで安楽死させることもある。仮に、クジラが自殺を図るほど知能の高い生物だとすれば、生き残ったクジラは、全力を尽くして彼らを海に帰した人間の暖かい心を察してくれることだろう。

方炯南(バン・ヒョンナム)論説委員 hnbhang@donga.com