
日本での失敗に対する負担をかかえて、昨年韓国に復帰し、1年余りを送って再び「国民的スター」に浮上した李鍾範(イ・ジョンボム、32、キア)はやっぱりプロだった。キアが専門家たちの予想を破って単独首位の高空飛行を続けているのは、李鍾範という「全天候解決屋」がいなかったら不可能なことだっただろう。
先月30日、ロッテ投手の金ジャンヒョンが投げたボールが顔にあたり、顔面の左側頬骨周囲の上顎骨などを骨折したあと、訓練を再開した李鍾範に8日、光州(クァンジュ)の無等(ムドゥン)競技場で会った。当初「練習再開は2週間以上の治療を受けたあとに可能」という診断が出たが、李鍾範は6日からウェートトレーニングを開始し、予想より早く復帰への準備に取り組んでいた。李鍾範は、この日、負傷後初めてランニングマシーンに乗って走った。
—今のコンディションは。
「まだ走るときに痛みがする。崔(チェ)サンドクとシン・ドンジュまで抜けてチームが苦しい状況なので、早く試合に出たいんだけど…、でも最近雨が降り続けていて試合が延期されているのは幸いなことだ。天もわれわれを助けてくれているようだ」
—体調が不完全なのに、練習再開は早すぎるのでは。
「きょうは単に走れるかどうかをチェックするためのテストをしたのだ。また死んでもグランドで倒れるべきだと、自分は考えている。私を見に来てくださるファンの皆さんを失望させるわけにはいかない。しかし、最初はすぐにでもプレーしかったけど、今は変わった。体に無理の行かない線でゆっくりと復帰するつもりだ。それがファンのためにも望ましいと思う。私を見に来てくださるるファンのために、少しでも永くプレーできる道を求めなくては、と思っている。一週間ほど過ぎたらよくなりそうだ」
—金城漢(キム・ソンハン)監督やコーチ陣は「チームの精神的支柱が抜けて大変だ」という反応を見せているけど。
「大した話ではない。率先している。シーズン開幕前の訓練キャンプで一生懸命やったし、今はそれが報いられているのだと思う。チームが1位をキープしていて嬉しい。後輩たちも私を信頼してくれている。後輩選手たちには、練習できる雰囲気を作ってやっているし、後輩とコーチ陣との架け橋の役割もしている」
—後輩たちがよく従っているということか。
「正直に言って、このころの後輩たちにはプロとしての根気が欠けている。契約金の何億ウォンを手に取ることで満足する傾向が著しい。少し痛みがするだけでも休もうとする。また、かつては先輩の顔色を少しはうかがっていたのだが、今は先輩たちが後輩の気をうかがうありさまだ。といっても仕方ない。最大に自由な雰囲気のなかで、たまにびしっと怒ってやっている。以前のヘッテ時代とは雰囲気が120%変わっている」
—チームが1位を守っている原動力は。
「信頼だ。コーチ陣と選手、先輩と後輩の間に信頼感が充満している。取り立てて言えるスタープレーヤーがいないのに、これだけできる理由がどこにあると思うか。お互いに信じているから、やればできるという雰囲気が自然な形で作られた」
—日本では振るわなかったが、本来の姿を完全に取り戻したと評価されているが。
「ファンの皆さんのお陰だ。昨シーズンに復帰したとき、ファンたちが熱狂的に歓迎してくれた。涙が出るくらいだった。振るわないときもあるし、失敗するときもあるものだが、ファンたちはいつも私の味方になってくれた。こんなファンたちを見捨てるわけにはいかなかった。だからグラウンドで死ぬ覚悟で懸命になって走った。プロ選手はファンがいるから活躍できるのではないか」
—それだけ優れているからファンも応援してくれのでは。
「以前の強烈なイメージが今も残っている面もある。安打を打つべきときに打って、盗塁すべきときに盗み、また得点が求められるときに得点する姿。今も以前のような姿を見せつけようと努力している。しかし、体力が落ちていてしんどい」
—国家代表にも選抜されたが。
「大学時代の92年以来10年ぶりだ。熱心にプレーして金メダルを獲得できるよう貢献したい。しかし、負担もある。ネームバリューというのもあるからね。アマチュアのときは負けても非難されないけど、プロとして名声を築いた状態で敗れると激しく非難されるだろうから。個人的にはプロよりはアマチュア中心で選抜した方がいいと思うけど」
—理由は。
「兵役問題という目的意識があるからだ。プロ選手の中でも軍隊に入らなければならない選手たちを中心に選考した方がよかったのでは。私も全盛期に防衛兵で服務し兵役問題を解決せざるを得なかった。あの時代がもっとももどかしい時期だった。体で食っていく選手たちにとって、軍隊で過ごす時間はもったいなく思うしかない。もちろん金寅植(キム・インシク)監督としては、最上のメンバーを選ばざるを得ないだろう」
—もし、また海外に進出する考えは。
「昨年、国内に復帰してから海外進出はあきらめた。32の歳で新しい挑戦を試みるのは容易なことではない。選手生活を終えてから米国で指導者研修を受けるつもりだ」
—いつまでプレーする計画か。
「体力が問題だ。5〜6年か、もっとプレーしたい」
—キアで引き続きプレーする計画なのか。
「ファンの皆さんは『李鍾範の抜けたキアは要らない』と言っている。そんなファンたちのためにもキアのためにプレーし続けたい」
梁鍾久 yjongk@donga.com






