今年の大統領選挙をめぐる政局はひときわ長く、その流れの起伏もひときわ激しいようだ。「うず巻く韓国政治」を身にしみて経験しているといえる。与党民主党の大統領選候補の「国民競選制」が新しい試みであったなら、3分の1地点を過ぎて予備選挙ランナーの半分以上がさまざまな理由でリタイアしてしまったことも、予想もできなかったことだ。なかでもトップランナーの李仁済(イ・インジェ)候補が、急にペースダウンしたことはただごとではない。このような状況なら、民主党の「国民競選制」は本来の姿を失ったも同然だ。
「陰謀論」を提起した李候補が途中でふらついたことは、大統領選をめぐる政局の突然の変化要因が多く、起伏が激しいという点を深く考えなかったためではなかろうか。金大中(キム・デジュン)大統領の意中を意味する「金心(金大統領の支持)」を狙って「陰謀論」を取り上げたなら、両者を単に並列させるのではなく、「金心」を導入部として現政権の明暗と前後左右を本格的に提起しなければならない。候補間の現政権との違いを共通の争点とする戦略なしに「陰謀論」だけを取り上げたために、候補たちの共感も関心も得られないのである。戦術的な各論で失敗したと言えよう。
現在浮かび上がってきたランナーは、民主党の盧武鉉候補とハンナラ党の李会昌総裁だ。李総裁は、ハンナラ党の内紛が起こった時、時期を逃がさず収拾に骨を折った。李総裁が総裁を放棄して、集団指導体制を受け入れるなど、党内の意見を収れんしたとはいうものの、いつ爆発するかわからない爆弾を抱えていることは確かだ。内紛が沈静化したとはいうが、まだひとつの火種がくすぶっている。ともかく、第一のうず巻きは終わった。
注目すべきことがある。民主党を中心に、党組織の外延を広げようというのかもしれないが、この場合、DJ政権の人事政策、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への政策、権力型不正事件による負担は、決して軽くない。さもなければ、この機会に新たな政治勢力が中心となる新党を結成するのか。あるいは「金心」との関係設定はどうするのか。このような質問が出てくるのは、言葉だけの政界再編であって、盧候補だけの力では政界を揺さぶることが難しいためだ。新たな外部勢力の登場の過程で、民主党内の既存組織とどのような物理的反応が起きるかもわからない。これもまたうず巻きの震源地である。
さらに決定的なヤマは、6月の統一地方選挙だ。金大統領が結成した民主党で選挙に臨む場合、圧勝すればこれといって問題はないものの、そうでない場合、その結果への責任論が出てくるだろう。野党が現政権の実情に総攻勢をかけることが明らかなうえ、これまで国政への国民の評価が非常に否定的であったことを考えると、結局地方選挙後の責任論は、さらなるうず巻きの原因として登場する公算が大きい。そのためか、政界には、今時分に登場が予想される人物を指して「6月の人」という言葉がささやかれていることも偶然ではなさそうだ。
結果論かもしれないが、今年の大統領選挙をめぐる政局がひときわ長く、変化要因が多いという点で、盧候補は政界再編をあまりにも早く取り上げたという印象を受ける。まだ多くの時間を残ししているにもかかわらず、政界再編論は早くも周囲を緊張させた。時間をかけて準備する対応論理と戦略的戦術が容易ではないためだ。
そして何よりも、大統領選挙の政局の入り口に入るや、すぐに発表された林東源(イム・ドンウォン)大統領特使の訪朝に注目する必要がある。訪朝後の措置がもたらすかもしれない南北関係の変化は、場合によっては起爆薬として作用する恐れがあり、選挙戦にかなりの影響を及ぼしうる。
最近の韓半島をとりまく動きから見て、今回は北朝鮮側が韓国側の要求に相当応じるとの専門家の見通しがある。このような場合、大統領選挙の政局は新しい局面を迎えるだろう。もとより、現政権勢力に有利な方向になることは明らかだ。この時は「陰謀論」レベルではなく、それをさらに飛び越えた「大戦略」のレベルとなろう。
崔圭徹(チェ・ギュチョル)論説室長