
米国のバージニアやメリーランド州、そして首都ワシントンの境界を成すポトマック川の「ポトマック」はインディアンの言葉で「愛」という意味だ。この「愛の川」は、アパラチア山脈から始まり、600kmを走って大西洋に入る。ワシントン周辺のポトマック川のほとりは、紅葉が目を見張るほど鮮やかだ。しかし、市内の雰囲気は例年の秋ではない。
ホワイトハウスの前と裏の道路は、いずれも閉鎖された。所々に立っている警察の目は険しい。
一般観光客と修学旅行に来た学生達が列を作る議事堂やスミソニアン博物館の通りも閑散としている。ポトマック川の向かいの国防省庁の建物には、9・11テロの傷痕が今でも生々しく残っている。片方がベコッとへっこんだタイヤのような惨たらしい姿だ。修理代が、8億ドルもかかると言う。
米国の苦悩は、秋と共に深まるだろう。ブッシュ大統領が、テレビに出演して「私は、炭そ菌に感染しなかった」と明らかにしなければならないほど、あちこちに炭そ病への恐怖が広がっている。どこへ行っても炭そ菌の話だけである。そのうえ、他の生化学兵器も登場し得るといった懸念も広がっている。戦線が2つだと言ったブッシュ大統領の言葉が実感できる。アフガニスタン戦争の人命被害も頭の痛い問題となっている。米軍特殊部隊員らの犠牲の可能性も大きくなっているうえ、アフガニスタン住民の凄惨たる生活状態が、しきりに反戦世論を刺激する。
世界的な反テロ戦線を強化することも予想より容易ではなさそうだ。第1次世界大戦が終るやいなや、米国は国際連盟創設に熱を上げた。無賃乗車や中立国にとどまる国がない汎世界的な集団安保体制を作って戦争を防ぐという意図だったが、いざ米国自身は上院の反対で国際連盟に入れなかった。約80年が経った今、米国は新たな性格の集団安保体制を構築しているところだ。気の合う国同士手を取り合って、勢力均衡を保った冷戦時代の同盟の概念ではない。全世界が皆参加する反テロ戦線を構築しようと言うのだ。しかし、世界の反応は以前とは違う。背を向ける国が目立つ。
そんな米国に北朝鮮はいかに映るだろうか。24日、慶南(キョンナム)大学極東問題研究所、マスコミ財団、そして米国ジョージタウン大学が、共同主催した韓半島関連セミナーに出席した米国側の参加者は、北朝鮮が今からでも米国に協調しなければならないと主張した。国務部のジャック・プリチャード韓半島平和会談特使は「米国は開かれている。黄金の機会だ。何でも応じる」と、北朝鮮の賛同を促した。いかなる情報であれ、北朝鮮が持っているテロに関する情報は、全部出せという注文だ。そうしなければ、北朝鮮はまた汎世界的な隊列から落ちこぼれるほかないという意味だ。
北朝鮮はなぜ積極的にならないのか。自分をテロ国家と見做す米国への憎しみも作用するであろうし、世界情勢がどう展開するのか正しく判断できない面もあるだろう。しかし、何より北朝鮮は、自分達の過去を全て打ち明けられる立場ではない。よど号ハイジャック犯も引き渡さなければならないし、中東やアフリカ各国を相手とした不正な武器取引きの詳細も明らかにしなければならない。きれいではない過去を明らかにすることは、プライドが許さないだろう。だからといって、すぐに「免罪符」がもらえるという保証もない。ややもすれば、さらに孤立に追い込まれる可能性が大きいと考えるだろう。北朝鮮はすでに外務省声明を通じて、テロリズムに反対するという立場を明らかにした。それが北朝鮮の限界ではなかろうか。
米国は、一方的に要求するのではなく、まず大国らしく積極的に関係改善の意思を明らかにできないのだろうか。テロ国家に指定しておいて、反テロ戦争に参加しろと言うのは、つじつまが合わない。北朝鮮を先ずテロ国家リストから外すと言えば、事は予想より容易に進むかもしれない。
北朝鮮の趙明禄(チョ・ミョンロク)国防委員会第1副委員長が、軍服を着たままホワイトハウスを訪れ、オルブライト米国務長官も平壌を訪れて、金正日(キム・ジョンイル)総書記と米朝関係の今後を協議したのが、まさに1年前のことだ。今の米朝関係は、その時と対照的だ。テロとの戦争は、米朝関係を次第に深い泥沼に追い込んでいるようだ。これ以上悪化する前にソロモンの知恵を見つけなければならない。
南賛淳(ナム・チャンスン)論説委員
南贊淳 chansoon@donga.com






