米国がアフガニスタンのタリバーン政権に対する軍事作戦を開始したことで、全世界が再び戦争の雰囲気に包まれているようだ。テロリストとその支援勢力への報復を狙った今回の米国のアフガン攻撃は、世界のほとんどの国々から支持を受けているのが事実だ。それだけ、十分な大義名分と根拠を確保している。
人類共同体を破壊するテロ行為は、如何なる理屈からも決して合理化できるものではない。世界の平和と安全のためにも根絶されるべきである。そういう意味で、アフガンのタリバーン政権は、米国の心臓部を攻撃した9月11日のテロ事件の首謀勢力と目されたオサマ・ビンラディン氏を文明社会に引き渡す義務がある。今回の軍事攻撃は、逆に彼らを隠し支援した疑いの強いタリバーン政権に対する当然の報復だと言える。
しかし、テロとの戦争は明確な原則と基準に基づいて、準備に万全を期して進められなければならない。先ず、米国は民間人の被害を最小限に抑えることに何よりも気を使う必要がある。民間人が犠牲になるテロとの戦争となれば、また新たなテロという非難を避けられなくなる。今はアフガンの軍事施設が攻撃の主な標的となっているが、今後追いつ、追われつの追撃戦が続けば、何の罪もない人々が犠牲になる可能性も少なくない。戦争によって家を失ったアフガン難民に対する支援も、さらに強化しなければならない。
この戦争は何としても、西欧世界とイスラム世界間の戦争に発展することのないようにしなければならない。テロリストを擁護している集団や反米勢力は、まるで文明の衝突でも発生したかのように、反テロ戦を誇張している。現在、ほとんどのイスラム諸国が米国の立場を支持しているとはいえ、今回の軍事攻撃に対してはやや消極的な反応を示している国も少なくない。イスラム世界の随所で発生している反米デモも無視できない水準に達している。米国が全世界的な支持基盤を維持するためには、特に穏健的なイスラム諸国の積極的な支持を取り付けなければならない。
我々はテロとの戦争が大きな成果をあげ、これ以上拡大されないことを望む。しかし、この戦争はややもすれば、ベトナム戦のような長期戦の様相を呈しかねない。その火種は全世界の至る所に飛び火する恐れがある。来年のワールドカップ大会など国際行事を控えている我々も例外ではないはずだ。安保はもちろん、長期戦による経済問題に至るまですべてを徹底的に点検していかなければならない。






