ローマ法王ヨハネ・パウロ2世が、ブッシュ米大統領と会った席で、クローン技術を使って人の細胞を作る「ヒト胚細胞研究」を直ちに中断するよう求めた。
イタリア・ジェノバで開催された主要8カ国首脳会議に出席した後、22日家族とともにローマ入りしたブッシュ米大統領は23日、ローマ郊外のリゾート地で法王と初めて顔を合せた。
AP通信など外信によると、法王はブッシュ大統領に「米国がめざす自由かつ道徳的な社会は人間の生命が身ごもる瞬間から自然死にいたるまでのいかなる段階においても、人間の生命を過少評価、または冒涜してはならない」と述べた。
法王はまた、「良心が地に落ち、安楽死、幼児の殺害などの邪悪なことを黙認しており、最近には研究目的で行われているヒト胚の培養も同じようなものだ」と、ブッシュ大統領にヒト胚細胞の研究に向けた米連邦政府の研究費支援を断るよう促した。
ヒト胚細胞の研究費支援の如何を決めなければならないブッシュ大統領は、この後に行われたシルビオ・イタリア首相との合同記者会見で「法王の提案を考慮する意向」を明らかにした。
ブッシュ大統領はヒト胚細胞の研究を引き続き支援する場合、米国国内の4400万のカトリック信者に見放されかねない。しかし、支援を中断したり制限すれば、宗教指導者や保守勢力に屈服したとの非難を浴びる状況に置かれていると、外国筋は分析した。
胚芽は精子と卵子の受精から2ヵ月足らずの初期の生命体のことを示し、これから得られた茎細胞は身体のすべての臓器の細胞に成長することができる。
したがって、茎細胞の研究は糖尿病、アルツハイマー病、火傷などの治療に大きく役立つものと科学者たちは期待している。
しかし、法王をはじめてとする人工中絶に反対しているグループは「茎細胞の抽出はその過程で生命体の胚芽が破壊されるため、人工中絶と同じようものだ」として反対している。
米国は、流産した胎児や冷凍保管されている胚芽から取り出した茎細胞に限って、研究を許可しているが、ヒト胚の研究自体を禁じている国も多い。
2001年のユネスコ国際生命倫理諮問委員会の報告書によると、ドイツ、フランス、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、ノルウェー、スイス、ブラジル、ペルーなどでは、クローン技術を使ったヒト胚を含めたヒト胚の研究そのものを法律で禁止している。
一方、死刑制度については、反対の意向を示している法王がこの日、米国の死刑制度については言及を避けた。バチカンのある関係者は「ブッシュ大統領と法王がお互いの立場をよく分かっている状況で、法王があえてこの問題を持ち出す理由はなかっただろう」と伝えた。
kimsk@donga.com






