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[コラム] オスロ行きの飛行機の中で

Posted December. 07, 2000 13:25,   

明日は金大中(キム・デジュン)大統領が世界で最も権威あるノーベル平和賞受賞のために出かける日だ。出かける大統領も、見送る国民も、喜ばしい感激的な日である。しかし、現在の国の雰囲気は必ずしもそうとは言えないようだ。

政府と青瓦台(大統領府)は、ノーベル賞の受賞自体はめでたいことだが、最近陥っている国民の事情と民心を考慮して慶祝行事を自制することにしたという。金大統領は、オスロ行きの飛行機内でさまざまなことで悩むだろう。多くの人を通じて聞いたいわば、難局に対する収拾政策の解決案を考え、その最上の解法について苦しむと見られる。しかし解法より、先に考えなければならないことがある。それは国の事情や民心がこんな羽目に陥るまでの原因と、その責任はだれが取るべきかを自分に率直に問うべきだ。

大統領自身の徹底的な原因分析が先行されない限り、難局に対する望ましい解法は出られないからだ。金大統領は「わが民族は底力がありどんな危機に対しても克復できるという自信がある」と話していた。それからIMF危機の際、国民が「金集め」運動まで繰り広げながら難局を乗り越えた例を挙げる。

しかし、大統領が必ず知らなければならないことがある。IMFの際と現在は似ている点も多いが、決定的な隔たりがあるということだ。その際は苦労するなかでも夢と期待があったのだ。史上初めての民主的な政権交替によって誕生した「国民の政府」への期待、経済に詳しい「準備された大統領」にかける希望があったからこそ全国民により底力を発揮できたのだ。今はどうか。期待が大きかったほど、失望も大きい。国民が夢を失った。金の指輪を寄付したり、自分の苦労を犠牲にしながらも、IMF危機を克復したが、その後、自分等に返された結果は、貧乏な人はより貧乏になり、お金持ちはより豊かになったという恨みが国民の根底にある。

20、30代の若い社長らの金使いは見るに堪えないものがある。数百億や数千億ウォンの不正貸出したということが発見され、捜査が行なわれているが、今まですっきり解決されたのは何1つない。数々の疑惑事件ごとに権力を牛耳る実勢らが介入しているようだが、それだけで終ってしまう。結局、執権与党の最高委員が各種非理に対する疑惑について話し、「第2の金賢哲(金永三政権当時、その息子が権力を牛耳る実勢の役割をした事件)」事態まで予告したのだ。

今まで民主党内で総裁と最高委員ら間の意思がどれほどまで伝わらなかったのであろうか。特別な時間を設け、それもやっとの事で機会を狙って自分が話したいことを話す程度なら、まだまだ党内での民主化とは遠い話しのようだ。鄭東泳(ジョン・ドンヨン)最高委員が発言した権魯甲(ゴン・ノガプ)最高委員の各種非理疑惑に巻き込まれた説はすでに流れていた話だ。今更説明するまでもない話なのに、まるで言ってはならない話をしたかのように、党内が騒がしいなんて笑える話だ。

民主党の金景梓(キム・キョンゼ)議員が話した通り、この政権は数十年間も厳しい軍事独裁によって血と涙を流しながら戦った結果たどり着いた政権である。金大統領の今回のノーベル平和賞受賞の功績も反独裁と反維新にそった民主化運動が最も大きい理由である。ところが、金大統領が故朴正煕(パク・ジョンヒ)大統領記念事業会の名誉会長として、記念館建立に200億ウォンの国庫支援までするということにおいて、昔しの民主化同志らはもどかしさを隠せずにいる。同志らは金大統領に名誉会長職の辞退を絶えず訴えているが、金大統領はビクともしない。これこそ、金大統領の独裁と傲慢だとし、相当たる人が背を向けた。

民主化同志だけではなく、金大統領の支持者らも多くが背を向けている。ある世論調査の結果によると、執権初期の金大統領に対する支持度は80%にのぼっていたが、現在は30%台へ急落したという。多くの国民が金大統領を指示したが、今はそれを撤回している。

問題はこの人らの空虚感だ。金大統領に対する支持は撤回したが、野党ハンナラ党の李会昌(イ・フェチャン)総裁を支持することはできないという人々なのだ。彼らは政治的な虚無感をいかに慰め、心を戻せるだろうか。これが金大統領と民主党が悩む課題の一つである。

中国の哲学者の荘子は話した。政治は頭でするものではなく、心でするものだ。危機の収拾政策は頭を使って出てくることではなく、政略と欲を捨てた心から湧き出るものではないのか。