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「潜在成長率ショック」の克服、政治リーダーシップかかっている

「潜在成長率ショック」の克服、政治リーダーシップかかっている

Posted October. 30, 2023 08:32,   

Updated October. 30, 2023 08:32

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「あなたが本当に愛国者だ」

約2年前、末っ子の3人目を生んで、周りからうんざりするほど聞かされた言葉だ。善意での言葉だが、聞く立場からは少し疑問に思った。個人の極めて自然な生活の一過程が、日本による植民地時代の独立運動や軍部独裁時代の民主化運動に似合いそうな「愛国」という単語と等置されかねないということが不思議に感じられたためだ。2020年代を生きる韓国人にとって、出産と育児は愛国に匹敵するほど悲壮で至難なものなのか。

ところが最近、子供3人を育てながら、知人たちの出産をめぐるお祝いの言葉に隠された重みが次第に現実化している。物価高や金利高と重なり、高校生の第1子と小学生の第2子の塾費だけが月給の30%を超える。記者は大学入試を準備する長女に対し、ソウル江北(カンブク)の一般高校の在学生の平均水準の塾費のみ支出している。課外授業は到底考えられない。先日、自律型私立高校に通う子供を持つ友人から、休みのたびに塾費だけで月500万ウォン程度を使うという話を聞いて驚いた。そして数年前、子供の教育のために海外勤務について悩んでいた知人の話が浮かんだ。かつて、中東オイルマネーの稼ぎに海を渡った産業軍が、出産軍に化する瞬間だった。

最近、韓国の今年の潜在成長率は初めて1%台に下がり、来年は1.7%にさらに下落するだろうという経済協力開発機構(OECD)の見通しが出ている。韓国より経済規模が15倍も大きく、資本主義の歴史がはるかに長い米国の来年の潜在成長率(1.9%)にも及ばない水準だ。この程度なら、「潜在成長率ショック」と言える。

原因は少子高齢化と生産性の低下だ。実際、この二つの要素は別のものではなく、互いにかみ合っている。教育改革や労働改革などの生産性向上の努力が実を結ばなければ、結局固着化した少子化構造を破ることができないためだ。例えば、膨大な私教育費用を減らし、人工知能(AI)時代への産業構造の変化に適した人材を養成できる教育改革が行われなければ、生産性と経済成長率を高めることはできない。ある人は移民拡大を代案として提示するが、フランスの移民暴動のような副作用を懸念せざるを得ない。

結局、生産性を高め、少子化構造を打破できる様々な構造改革が確実な答案にならざるを得ない。問題は良い薬は苦味がするように、改革には必ず代価が伴うと。既存の社会構造から利益を得る既得権集団の抵抗が代表的だ。改革に対する国民的共感を土台に、政界が利益集団を着実に説得する正攻法以外に方法はない。

最近、李昌鏞(イ・チャンヨン)韓国銀行総裁は記者懇談会で、「どうすれば、低成長から脱することができるかは知っている。ただ、できないのは、事案ごとに利害当事者が違っているからだ」とし、「構造改革をすれば、潜在成長率は2%以上に上がる。選択は政治にかかっている」と話した。しかし、政府は3大改革の一つとして推進している年金改革案を打ち出しながら保険料率すら提示せず、「中身がない」という批判を浴びている。百年の計の年金改革を来年の総選挙と結びつけたのなら、以前の政府のように、ポピュリズムの批判を避けることはできないだろう。遠隔医療や医学部定員の拡大、国民年金など、山積した構造改革を右往左往しないで大胆に推進できる政治的リーダーシップが切実だ。