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「北朝鮮のやり方をなぜ…」国の品位を毀損する横断幕政治

「北朝鮮のやり方をなぜ…」国の品位を毀損する横断幕政治

Posted July. 05, 2023 08:27,   

Updated July. 05, 2023 08:27

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「南(韓国)に来てこんな無様なことを見ることになるとは思わなかった」

北朝鮮で政治宣伝物を書くこと(特官員)をした脱北者のAさんは最近、「大韓民国のあちこちを覆っている政党が掲げた横断幕を見ると、呆れてしまう」と話した。北朝鮮でしか見られなかった露骨な表現を至る所で簡単に見かけるという。Aさんは「平壌だけでやっている古いスタイルの宣伝や扇動をインターネットとモバイル強国である韓国の政治家たちが、なぜ使っているのか分からない」と話した。

第22代総選挙を280日後に控えた大韓民国は、まさに「横断幕共和国」だ。今年5月に行政安全部(行安部)が「横断幕設置ガイドライン」をまとめたが、ほとんど改善は進んでいない。交差点と横断歩道ごとに掲げられている横断幕に市民たちは精神的な、物理的な被害を訴えいる。相手に対する露骨な誹謗や自らの宣伝が多く、子供たちに合わせる顔がないほど恥ずかしい。「いったいなぜ、こんな文言を毎日見ながら過ごさなければならないのか」として怒りを吐露する人も少なくない。

政党民主主義を強化するという趣旨から始まった政治横断幕の無制限許容は、本来の機能を失って久しい。露骨な誹謗が中心となった表現は、むしろ市民に問題の本質を分かりにくくする。極端な見方を浮き彫りにして社会を分裂させるだけだ。「党大会の現金封筒ばら撒き疑惑」を皮肉った「ともに不正庇護党」、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の修学能力試験発言を指摘した「大統領のせいで生きていけない!」などがそれだ。2期目議員の一人は「党が地方区に文言を指示すれば全国に同じ文言の横断幕がかかるが、そのため草の根民主主義の価値や多様な見解は排除されるのが常」と話した。

政党の横断幕が汝矣島(ヨイド)の既得権を維持する側面もある。現役議員と党協委員長(地域委員長)だけが横断幕を掲載することができ、政治新人には不利な構造であるからだ。

各自治体も現役議員の機嫌を損ねることを意識している。実際、京畿道(キョンギド)北部の現役議員は、広報横断幕数十個を地域に至るところに掲げた。掲載期限(15日)が過ぎても外さないため、政治家志望者たちが市役所に「取り締まりってくれ」と要請したが、公務員たちは「当事者に直接電話してもらいたい」と言っている。ある政治家志望者は、「行安部の指針によれば政党の横断幕は政党のお金で制作しなければならないが、現役議員が政党法に違反して個人の金を使って事前選挙運動をしているのだ」と批判した。

Aさんは、「北朝鮮の政治宣伝物から体制の矛盾が克明に表れている」と話した。例えば「百人力で団結しよう」と書かれた横断幕が掛けられると、一般住民たちは「また始まった」と恐れていたという。その後、人民班長など中間幹部たちが集まって実践方策を模索するとして議論にかけては、結局はキムチやコメ、トウモロコシなどの忠誠物品を取り上げるからだ。Aさんは、「表向きには沈黙しているけど、北朝鮮でも家族や知り合い同士の席では、宣伝物を悪く言う人が多かった」と話した。

韓国はどうだろうか。極端な政治と嫌悪を煽る政党の横断幕は、すでに国の品位を深刻に毀損している。外国人観光客が横断幕の内容を知ったら、韓国の民主主義水準に感嘆するだろうか?むしろ逆の反応をする可能性が高い。全体主義の体制下でうめき声を上げながら暮らし、ついには韓国に亡命した脱北者までも「うんざりだ」と言うほどだ。遅れたが、今からでも国会が関連法の再改正に取り組むべきだ。