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「ジャズ伝説」の演技、アンドラ・デイ対ダイアナ・ロス

「ジャズ伝説」の演技、アンドラ・デイ対ダイアナ・ロス

Posted November. 12, 2021 08:40,   

Updated November. 12, 2021 08:40

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「『My Man’s Gone Now』を(ジャズ歌手)エラ・フィッツジェラルドが歌えば、『彼氏がちょっとパンを買いに出かけた』と聞こえるが、ビリーが歌えば『彼氏が荷物をまとめて永遠に去ってしまった』と聞こえます」(2019年のドキュメンタリー映画『ビリー』より)

伝説的ジャズボーカルのビリー・ホリデイ(1915〜1959)は、苦いコーヒーのように訴える力のある声で激動の人生を生きてきた。10歳の時に性的暴行を受けて以来、売春婦として生き、夫と恋人の虐待と搾取、薬物中毒で一生苦しんだ。苦難の深淵から抜き出したかのように「I’m a Fool to Want You」「Dont’t Explain」「God Bless the Child」などの名演を数多く残した。

4日に韓国で公開された映画「ビリー・ホリデイ」は、そんな彼女の人生を新たに彩った作品だ(米国公開は2019年)。伝記映画ではあるが、フィクションだ。ホリデイ役を演じたR&B・ソウル歌手アンドラ・デイ(37)が、驚くべき熱演と熱唱で独特のキャラクターを体化した。俳優デビュー作であることが信じられない。デイの音声はホリデイに比べて厚さは薄いが、その技巧はもちろん、だるくて悲痛な表情まで模写した熱唱シーンがすべて映画のハイライトだ。

特に名曲「Strange Fruit」を歌うデイのクローズアップシーンが圧巻だ。人種差別主義者たちのリンチで木に首をつられて死んだ黒人たちの姿を、奇妙な果物に例えた曲。映画の原題は「United States vs. Billie Holiday」、すなわち「合衆国対ホリデイ」だ。個人の悲劇的な人生を越え、人種差別に立ち向かった闘士としてホリデイにスポットライトを当てた映画の狙いに、デイの熱演が呼応する。

これまでホリデイの人生を扱ったドキュメンタリーは多かった。2019年作の「ビリー」もそのうちの一つ。しかし劇映画の「ビリー・ホリデイ」が出たのは1972年の「レディ・シングス・ア・ブルース」以来47年ぶりだ。当時、主演は当時のポップスター、ダイアナ・ロスだった。「レディー…」は人種差別と麻薬問題を扱いながらも、個人史にスポットライトを当てた。劇の雰囲気が明るく、ロマンスの割合が高く、ロスの演技も終始明るい方だった。グループ「スプリームス」出身のロスは、非の打ち所のない歌唱を聞かせてくれたが、ホリデイの重みを再現した深さの面ではデイの肩を持ちたい。

ロスとデイは、それぞれホリデイ役でアカデミー主演女優賞にノミネートされた。ゴールデングローブで、ロスは新人女優賞を、デイは主演女優賞を受賞した。


イム・ヒユン記者 imi@donga.com