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世界史の裏に隠れた007たちの活躍

Posted October. 02, 2021 08:18,   

Updated October. 02, 2021 08:18

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「同盟国の要員を死なせるわけにはいかなかった」

スパイ映画「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(2015)で英国の秘密情報部(MI6)の女性要員イルサが上司に言った台詞だ。与えられた任務ではないのに命をかけて米国の情報要員イーサンを救出した理由を「同盟国」に見出したのだ。国家情報の分野で米国と英国の特殊な関係を象徴的に示すシーンだ。考えて見れば、核拡散防止の原則を半世紀以上堅持してきた米国が最近、原子力潜水艦の技術をオーストラリアに提供することにしたのも、アングロサクソン国家で構成された「ファイブ・アイズ」(米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで構成された機密情報共有の枠組み)によるところが大きい。

近現代史を専攻し英ケンブリッジ大学教授を務めた著者は、同書でモーセの「約束の地」の偵察から米9・11テロに至るまで3000年の世界の情報活動の歴史を追跡する。この中で第2次世界大戦後にも続いている現在の米英の蜜月関係は、両国の情報協力についての理解なくしてその背景と実体を正確に把握することはできないと指摘する。

著者は、情報活動の重要性を知り、これをうまく活用した国家は、歴史的に成功したと説明する。第1次世界大戦の経験を基に、信号情報(SIGINT・シギント)を積極的に収集し、ナチスに対抗した英国が代表的だ。一方、米国は日本の暗号電文の解読を疎かにしたため、真珠湾攻撃に対応できなかった。潜在的脅威の国家の理念と歴史に対する理解も必須だ。例えば、ナチスと共産主義理念に精通した西側の情報機関は、第2次世界大戦と冷戦で輝かしい活躍を見せた。しかし、彼らは脱冷戦後、イスラム極端主義に対しては無知だった。これは9・11テロとアフガニスタンからの米軍撤退などの悲劇につながった。

著者は、安保危機を招きかねない「情報の失敗」を防ぐには、権力者が勝手に情報を解釈、加工することを極度に警戒しなければならないと強調する。南北和解のムードが熟した3回目の南北首脳会談後、北朝鮮指導部の交代をめぐる国家情報院の予測が外れたという指摘を受け、反省しなければならない理由だ。


金相雲 sukim@donga.com