「これまで兄の影に隠れてきましたけど(笑)、今日だけは自分を主人公に記事を書いてほしいですね」
金正燮(キム・ジョンソプ、31、三星生命)は11日、カタール・ドーハ・アスパイアホールで行われたアジア大会・レスリング男子グレコローマンスタイルの84kg級決勝で、ヤヒタ・アブタビク(ヨルダン)を2−0で破って優勝した。アジア大会に3回挑戦し、とうとう金メダルを獲得したのだ。
金正燮は1998年にバンコクで銅メダル、02年の釜山(プサン)アジア大会で銀メダルを取った。兄のインソプ(33・三星生命コーチ・写真)はバンコクと釜山で全部金メダルを取り、00年シドニー五輪でも銀メダルを首にかけた。
舞台のスポットライトはいつも兄が受け、弟は常に非運の助演を演じるだけだった。
8年目の主演。金正燮は新派劇よりコミックドラマの主人公を望んだ。太極旗を翻しながら競技場を回っていたところ、ちょうどスピーカーから韓国のリズミカルな船歌が流れると、両足を交互に伸ばして踊った。
「韓国の歌が流れたんです。そんな時は、もともとタルチュム(仮面舞)を踊るじゃないですか」
タルチュム(韓国伝統の仮面踊り)というよりコミックダンスに近かったが、おかげで競技場には爆笑が巻き起こった。
昨年10月に結婚した金正燮は来年2月、お父さんになるが、その間、出産を控えた妻にさびしい思いをさせたのがとてもすまないと言った。そして、妻への感謝も忘れなかった。
「今日、私が着た下着は、家内が慎重を期して選んでくれたものです。そのおかげで良い試合ができたようです」
その間、いつも主人公として登場した兄、金インソプ・コーチはこの日だけは助演になって、競技場の外で弟が優勝する瞬間を見守った。
「(正燮が)アジア大会で優勝したので、08年北京五輪では私が取れなかった金メダルを取ってほしい」と言った。
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