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[オピニオン]覆面会見

Posted May. 22, 2003 22:28,   

4月中旬、武装した警官がオーストラリア南西部海岸で潜伏勤務に入った。暴風雨によって大きな波が打つ海は漆黒のように暗かった。どの程度を待っただろうか。黒い船の姿がかすかに見えてきた。ずいぶん長い間待っていると、ゴムボートが波をかきわけて海岸に近付き始めた。波と死闘した船員1人が水中に沈んだが、警察は動かずただ見守っていた。1人は辛うじて海岸に上陸するのに成功した。彼が引きずってきたゴムボートには大きい包みが積まれていた。それでも警察は微動だもしないで待っていた。やがて闇の中から男2人が現われて、船員に近付いた。

◆ワシントン・ポスト紙が報じた北朝鮮の船、ボンス号の船員たちが麻薬を渡す場面だ。オーストラリア警察は包みを渡された男たちを追跡して一味3人を逮捕した。海では4日間の追討作戦を繰り広げたあげく、4000t級のボンス号を拿捕した。ヘロイン50kgが押収されており、北朝鮮の船員30人が逮捕された。ほぼ1ヵ月かけてオーストラリア警察が隠密な作戦を繰り広げた結果の賜物だった。オーストラリアのマスコミは最近、船員のうち、中国北京駐在の北朝鮮大使館の政務参事が含まれていたという驚くべき事実を伝えた。

◆ボンス号の麻薬密輸に対する調査は今だに進められているが、北朝鮮の麻薬密売を防ぐための包囲作戦はすでに始まった。作戦の主役は米国、オーストラリア、日本。ハワード豪首相は5月の最初の週末、米国に飛んでブッシュ大統領に会った。ボンス号に関するホットな情報を伝えたに違いない。先週は日本とオーストラリアの長官級の接触があった。小泉純一郎日本総理は明日ブッシュ大統領に会う。北朝鮮の核と麻薬が米・豪、日・米首脳会談の共通議題になったことは決して偶然ではない。ブッシュ大統領がオーストラリアと日本総理をテキサス州クローフォード牧場に招待して手厚くもてなすことも注目しなければならない。

◆3日前、米上院で進められた脱北者の証言も、オーストラリア警察の作戦に劣らず、北朝鮮の麻薬取り引きの実情を生々しく告発した。脱北者2人は覆面をかぶったまま、屏風の後ろから証言をした。覆面会見はフランスから独立するとして武装闘争をしているコルシカの反政府団体のリーダーや中南米のゲリラのリーダーたちがよく使う方法だ。脱北者たちがテロリストのように、顔を覆って暴露しなければならないほどに北朝鮮の犯罪行為が深刻だという話だ。前政権の時、韓国政府が北朝鮮産麻薬を摘発したにもかかわらず、もみ消したという疑惑まで持ち上がっている。脱北者の覆面の裏に北朝鮮の各種の不法行為だけではなく、韓国政府の堂々としていない対北政策まで隠れているようで残念だ。

方炯南(パン・ヒョンナム)論説委員 hnbhang@donga.com