そんなにもミッキーマウスと戯れたかったのだろうか。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日(キム・ジョンイル)総書記の長男、金正男(キム・ジョンナム)がこのほど、パリのディズニーランドを訪問しようとしたが、フランス政府から入国を拒否された。昨年5月、日本のディズニーランドに行こうとして偽造のパスポートを使った疑いで、国際的い恥を掻いて以来2回目のことになる。30過ぎの年齢、父親そっくりの体つき。どう見ても、子供たちの遊び場に仲間入りしそうな男ではない。その上、自国発核の雲が世界中を覆っているなか、父親は米国を相手に崖っプチの戦術を駆使している今日この頃、最も「非娯楽的な国の皇太子」である彼は、一体どういうつもりで最も米国的、かつ娯楽的なディズニーランドに行こうとしたのだろうか。
▲ポップスの皇帝ことマイケル・ジャクソンの住む邸宅の名前がネバーランドである。子どもの頃から歌わなければならず、平凡な幼年時代を過ごすことができなかった彼は、3人の子どもを持つ父親になった今なお、おもちゃと動物に囲まれてピーターパンのように暮らしている。金正男からも似通ったところが見られる。金正日の隠された女、成恵琳(ソン・へリム)さんを母親に持つ彼は、祖母のもとで孤独な成長期を送った。3、4歳の頃まで金総書記自らおしっこをさせるほどの溺愛ぶりだったと言われるが、母親の愛には及ばなかったはずだ。生まれて1歳半までの口脣期の過ごし方次第では、精神的に未熟で自己中心的になりやすいというのが専門家の分析である。今なお心理的幼児期に止まっている彼のために、北朝鮮では「少年大将」というアニメの延長放送までしている。
▲幼い頃のファンタジーを、先端テクノロジーで肉付けして消費できるようにした、米国流夢の工場がディズニーランドである。おとぎばなしに出てくる白雪姫とも握手できるし、人々は皆悩みや心配のない幸せな表情をしている。上手くできた計画都市のようなテーマパークには、スリル満点の乗り物から、未来のサイエンスフィクションを具体化したトゥモローランド、世界のみどころからショッピングモールに至るまで、何もかもが揃っている。平凡な人でさえ日常から逸脱したそう快さに酔いしれるというのに「不良国」の、それもまだ「後継者」として認められていない不安な身分の彼が、どれほど恍惚な現実離れの快感に酔いしれるだろうかを想像すると、彼が不憫にさえ思える。
▲そこで、マイケル・ムーアという変り者の作家が、著書の「間抜けな白人たち」の中で冗談のように書いていた主張が「ピョンヤンにテーマパークを造ってあげよう」というもの。金正男を管理人にすえて、金正日のためにはユニバーサルスタジオを贈るのも良いだろう。だからといって、北朝鮮の経済を救うことはできないまでも、少なくともこの親子に職を与えて、究極的には北朝鮮を破滅から救えるだろうというのが彼の毒舌だ。もしも、北朝鮮に軽水炉と原発の代りにテーマパークが建てられ、そして彼らが核を、ミサイルを、崖っプチの戦術を諦めることができるとすれば、どれほど素敵なことだろうか。
キム・スンドク論説委員 yuri@donga.com