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[オピニオン]忘却の危険

Posted December. 08, 2002 22:33,   

人間の脳は、宇宙でもっとも複雑で神秘的な構造物で、約14億の神経細胞とその細胞に栄養を供給する1000億の膠細胞で構成されており、その組み合わせの可能性はなんと10兆にのぼるという。頭脳生理学によると、人間の脳は、ハ虫類時代である約5億年前に、呼吸や脈拍などの生命維持機能を担う脳幹を形成し、情緒や動機を媒介する脳の辺縁系は、原始哺乳類時代である2億〜3億年前に発達し、言語、推理、判断、心像などの高等機能を担う大脳新皮質層は、約5000万年前に形成されたという。

◆脳を納める人間の頭は、出生後4倍の大きさに育つ。新生児の頭は5歳までに成人の90%にまで大きくなり、10歳頃にはほぼ完成する。成人の脳の重さは、1.2〜1.5キロ程度で、およそ体重の2%に当たる。心理学者によると、脳は3系で構成されており、第1系は力の系またはエネルギー系で、欲求、動機、意識を支配して作用する。第2系は、触角、聴覚、視角的情報を受け入れて分析し、記号を付与して記憶に貯蔵する入力系である。第3系は、行為を計画して、その意図と結果を比較し、判断する計画と出力の系である。

◆記憶し、話し、動くすべての行為が脳を通じて行なわれるため、脳が損傷した場合、記憶をそう失したり、どんな行動をしなければならないかが分からなくなる。体の一部や全体を動かすことすらできなくなることもある。脳の記憶能力も驚くに値するが、忘却機能も神秘的である。心の傷や必要でないことは、年月が経てば自然に忘れる。記憶だけでなく、このような忘却も恩恵である。すべてのことを忘れることができなければ、どうやって生きていけばいいだろうか。多様な学習プログラムは、脳の発達を促進しようとするが、脳は複雑で敏感な器官であるため、安易に影響を及ぼそうとしてはいけない。とりわけ記憶の一部を人為的に忘れようとしてはならない。

◆毎年この時分になると、「忘年会」という名の集まりが多くなる。「忘」は「心を失う」という文字だから、記憶をなくすという意味である。一年を過ごし、苦しかった記憶を消してしまい、新年の決心を新たにすることは有益なことだ。しかし、忘れるために過度な飲酒や喫煙など、無理な振る無いは非常に危険である。無理に脳細胞をマヒさせることで、脳全体を傷つけるためである。飲み過ぎや喫煙は、脳中風の主要原因になる。そのため、忘却は脳の自然な機能として残し、無理をしないで脳を活性化させる努力だけをすることである。

鞖圭漢(ベ・ギュハン)客員論説委員(国民大学教授) baeku@hotmail.com