
トントントン。
6日早朝から、忠清南道牙山(チュンチョンナムド・アサン)の道高面(トゴミョン)金山(クムサン)里など全国6地域に騒がしい金づちの音が響きわたった。この音は10日まで続いた。
国際ハビタット連合の「愛の家作り運動」のひとつ「ジミー・カーター特別建築事業2001」が韓国で行われた。
今回建てられた愛の家は、メイン事業地牙山の「融和の村」80世帯をはじめ慶山(キョンサン)、太白(テベク)、晋州(チンジュ)、群山(クンサン)、坡州(パジュ)で計136世帯に達する。こじんまりとした2階建ての木造住宅が、国内外から集まった4000余名のボランティアメンバーの手によって建てられたのである。そしてこれらの家は10日、厳正な審査を経て選ばれた家を持たない庶民に等しく分け与えられた。
住む家が無いほど辛いものはない。世界のどの先進国であれ、住居問題を完全に解決した国はない。韓国の住宅普及率も90%を越えるそうだが、実際にマイホームを持っている比率はこれよりはるかに低いというのが定説だ。のみならず、人が住めないような家で生活せざるをえない数多くの家庭や、雨が降れば水に浸る半地下の1部屋の借間を転転としなければならない庶民も未だ多い。
家庭は大切だ。家庭で愛が芽生え、そして成長する。しかし、住居問題が解決しなければ家庭が揺らぎ、家庭が揺らげば社会が揺らぐ。したがって、住居問題は社会の安定の基本要素であるわけだ。
25年前、米国南部の小都市の農場で始まった「ハビタット愛の家作り運動」は、全世界に広まり、現在まで79カ国で10万世帯を越える家が建てらている。この運動は、一生努力しても自分の能力ではマイホームを持てない疎外された隣人のために、個人や教会、企業、各種の社会団体が力を合せて家を建て、ばらばらになった家庭を立ち直らせる愛の実践運動だ。
また、階層間、地域間、国家と民族間の不和を解消する融和の運動でもある。
それだけではない。入居する人は500時間の労働に参加し、長期無利息という特典はあるが、建築費用を自ら返済することによって堂々と家主になれる仕組みになっている。労働をすることで助け合う共同意識を持たせ、地域社会のリーダーシップを育成する持続的な社会革新運動としてより大きな意味を持っている。
この1週間、灼熱する太陽の下で玉の汗を流し熱心に働くボランティア達の崇高な姿を見て、労働の神聖さを改めて感じることができた。夏の休暇や休み期間を全て奉仕活動に捧げた家族、大学サークルのメンバー、 軍人、教会のボランティアがいるかと思えば、子どもを近所の人に預けて来た母親もいた。脚にギブスをしたまま一所懸命通訳をする在米韓国人の高校生、職業教育を受けた少年院の生徒達、70才という高齢の韓国戦争元兵士をはじめ、26カ国から来た多くのボランティアに出会った。何が彼らをそこに集まらせたのか。彼らは自身の小さな力を捧げれば捧げるほど豊かになるという愛の奥妙な秘密を知っている。
愛の家作りの行事で、毎回最も大きい感動を与えるのが入居式だ。家の鍵と聖書を手渡された入居者が、ボランティアをぎゅっと抱きしめた瞬間、こみ上げてくる感情を抑えきれず思わず涙する姿を見る度に、愛という偉大な力を感じさせられる。その光景を目にしながら、私自身ボランティア運動の一員になったことをありがたく思う。
近頃、経済が厳しくなり、世知辛い世の中になったと言われる。そのせいか「自分から、自分の家族から、自分の会社から」というエゴが広まっている気がする。
息苦しい世の中だ。そんな中、隣人に幸福を与え愛を実践するハビタット運動こそ、我々の社会の閉塞感を解消していく起曝剤になるはずだ。
今後もこの運動が心の壁を取りはらって、東西の融合と隣人間の共同体意識をよみがえらせ、情にあふれる社会を作る足がかりになることを切に望む。
そして、ハビタット運動が、北の地にも広がり南北間の信頼形成の糸口になればと思う。
イ・ギョンヒ(延世大教授、ジミー・カーター特別建築事業2001総括理事)