Go to contents

[社説] ある無期囚の真実

Posted March. 23, 2001 18:45,   

法は、果たして誰のためのものか。人間の錯覚や偏執、捏造などによって刑罰が濫用されるとしたら、国家はその被害を補填できるのか。自分は無実だという、ある無期懲役囚の血のにじむような絶叫は、改めて人間と刑罰の問題を考えさせられる。本紙の法曹担当チームが30年前の真実を追跡している、チョン・ジンソク(仮名・67)さんの事件は、70年代の検察が権力をどのように行使したか、司法はまた、どのような役割をしたのかを振り返り、反省する契機になるという点で、示唆するところが大きい。

チョンさんは72年、強姦殺人事件の容疑者として身柄拘束・起訴された。1〜3審まですべて無期懲役刑の宣告を受け、15年2ヶ月の間服役した後、87年に模範囚として出所した。しかし、それで刑罰が終わったのではなかった。刑務所は出てきたが、彼を待っていたものは冷遇と蔑視だけだった。彼はその後、南部の山奥の村にずっと一人で隠れ住んで来たという。そんな彼が、遅ればせながら潔白を主張しはじめた。チョンさんの訴えが大きな反響を返してきたのは、死ぬ前に真実を語りたいという彼の告白が、良心の叫びになりうるからだ。彼は、事件当時警察で自白をしたのは、警察によるひどい拷問のせいだったと主張した。

これを裏付けるように、警察の強圧的な捜査に絶えられず、当時、虚偽の証言をしたという良心的な暴露が相次いでいる。主な証人たちは当時の証言を一様に覆している。チョンさんの裁判の過程で、当初の証言は間違ったものだと事実を述べるや、検察が自身を偽証罪で逮捕したという証人まで現れた。事件のあった当日、被害者の死体を直接解剖した専門医の証言も衝撃的だ。検察と警察、裁判部がすべてがチョンさんのアリバイが成立する自身の所見書を無視し、事件の10日後に死体を見た国立科学捜査研究所の研究員の意見書を有罪の証拠として採択したというものだ。

もちろん、我々がチョンさんの無罪を断定するものではない。この事件の真実は、永遠に明かされない可能性もある。ただ、有罪判決の根拠となった状況証拠と、周囲の証言が覆えっていることに注目しないわけにはいかない。このような点から、チョンさんが99年11月にソウル高等裁判所に出した再審請求が、果たして受け入れられるかに関心が集まるのは当然のことだ。