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美術になった政治スローガン

Posted February. 06, 2020 07:49,   

Updated February. 06, 2020 07:49

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ドイツ・カッセルで5年ごとに開かれる現代美術展「ドクメンタ」に行くと、これが芸術なのかどうか判断が難しい作品にしばしば出会う。特に、2017年の美術展はギリシャ・アテネと同時に進行され、注目を浴びた。2つの都市のあちこちに「私たちは皆国民だ」という文句が12ヵ国の言語で書かれた大型の垂れ幕とポスターが貼り出された。

広告や集会の垂れ幕のようなこの印刷物は、ドイツ出身の芸術家ハンス・ハーケの作品だ。ハーケは、広告やジャーナリズムの形式を借りた現実に批判的な作品で有名だが、1970年にニューヨーク現代美術館に展示した投票箱が最も代表的だ。ハーケは、展示場の入口に投票箱を設置し、観覧者にネルソン・ロックフェラー・ニューヨーク州知事のベトナム戦争の支持が選挙で彼に票を与えてはいけない理由になるかを尋ねた。当時ロックフェラーは、この美術館の理事会の役員でもあった。投票の結果は「そうだ」が圧倒的に多かった。最も尖鋭な政治争点を美術の制度の中に引き入れた作品だった。

ハーケが世界的権威のドクメンタの展示に使った文句も、「東ドイツ月曜デモ」に登場した政治スローガンから取られた。1989年、独裁の不当さにもう耐えることができなかった東ドイツ市民は、「私たちが国民だ」と叫んで毎週月曜日、街頭に出た。そして最終的にベルリンの壁を押し倒した。しかし、欧州難民問題が起こると、2015年にドイツ極右団体「ペギーダ」はこのスローガンを再び流行させ、「私たち」をドイツ人に限定して移民と難民に対する差別を正当化することに利用した。

ハーケは難民問題で分裂した欧州社会を見て、このスローガンの本来の意味を世界市民に想起させようと考えた。ハーケが、高級美術の代わりに印刷物を、美術館の代わりに街頭を選んだ理由だ。さらに、文字の両サイドの虹色は希望の意味もあるが、性的マイノリティを象徴する。この作品のメッセージはすべての人はみな平等であり、性別や肌の色、宗教、国籍などいかなる理由であれ差別を受けてはならないという常識の覚醒である。

美術評論家