尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領は９日、海兵隊員チェ上等兵殉職事故に関する特別検察官任命法（特検法）について、「国民が『手加減の疑惑がある』、『納得できない』と言うなら、その時は私が特検をしようと先に主張する」と述べた。チェ上等兵殉職事件の外圧疑惑に対して進行中の高位公職者犯罪捜査処（高捜処）の捜査結果を見届けるという立場で、現在政府に送られているチェ上等兵特検法については再議要求権（拒否権）の行使を予告したのだ。野党は即座に反発し、尹大統領にチェ上等兵特検法の即時受け入れを迫った。尹大統領は２２日までに拒否権を行使しなければならないが、野党は２８日に予定されている本会議でチェ特検法の再採決を推進する計画だ。
●尹大統領「実施中の捜査と司法手続きをひとまず見届けなければ」
尹大統領は同日、龍山（ヨンサン）大統領室のブリーフィングルームで開かれた就任２年の記者会見で、チェ上等兵特検法に関する質問を受け、「特検の趣旨を見ても、進行中の捜査と司法手続きをひとまず見届けなければならない」とし、「捜査関係者の心構えと姿勢を私たちがひとまず信じて、見守るのが正しい」と述べた。
大統領室関係者は同日、東亜（トンア）日報の電話取材に対して、「尹大統領が高捜処などの捜査を見届け、捜査が不十分であれば直接特検を要請すると言ったので、今回のチェ上等兵特検法に対する拒否権行使は捜査期間を確保するための必然的な性格がある」と説明した。チェ上等兵特検法は、最大野党「共に民主党」の主導で２日に国会本会議を通過し、７日に政府に送られた。拒否権行使は、法案の政府送付後１５日以内に可能で、尹大統領は今月２２日までに拒否権を行使しなければならない。政府内では、早ければ１４日の閣議で拒否権を決定する可能性が浮上している。
チェ上等兵特検法に対する拒否権行使が予告され、高捜処の捜査を通じた真相究明がより重要になった。高捜処は、尹大統領の記者会見について、「これまでの大統領室の立場と変わらない」とし、「（高捜処の）特別な立場はない」と明らかにした。高捜処は最近、事件の主要被疑者を呼び、捜査にスピードを上げている。先月２６日と２９日、重要被疑者であるユ・ジェウン国防部法務管理官を呼び出して調べた。ユ氏は昨年８月２日、師団長など８人に容疑があるとする海兵隊捜査団の捜査結果を慶尚北道（キョンサンプクト）警察庁から回収する過程で、イ・シウォン大統領公職紀綱秘書官と電話で話したことが分かった。
その後、高捜処はパク・ギョンフン元国防部調査本部職務代理、金桂煥（キム・ゲファン）海兵隊司令官らをそれぞれ５月２日と６日に呼び出して調べた。高捜処は今後、申範澈（シン・ボムチョル）前国防部次官、李鐘燮（イ・ジョンソプ）前国防部長官など上層部に対する調べも進める方針だ。海兵隊捜査団の捜査結果を直接決裁していた李氏は、昨年７月３１日、大統領室に電話した後、結果発表を取り消すよう指示した疑いを受けている。高捜処は李氏を呼び、大統領室の介入の有無について追及する考えだ。
●野党「拒否権行使時、責任は尹大統領が負わなければ」
「共に民主党」の朴賛大（パク・チャンデ）院内代表は、尹大統領の会見後、緊急記者会見を開き、チェ上等兵特検法を直ちに受け入れるよう迫った。朴氏は、「現政権になって２年間で拒否権を９回行使した」とし、「もしチェ上等兵特検法に拒否権を行使すれば、今後発生するすべての責任は大統領が負わなければならない」と警告した。また、「今後も特検関連部分において引き続き拒否権を行使するとすれば、国民と共に明確な抵抗の声を出さなければならないだろう」と述べた。
「共に民主党」は、尹大統領が１４日の閣議でチェ上等兵特検法に対して拒否権を行使する可能性が高いため、２８日に予定されている第２１代国会最後の本会議でチェ上等兵特検法の再採決を実施する計画だ。
同党は、与党内の離反票が多くないと見ており、再採決の定足数（出席議員の３分の２）を満たすのは難しいと見ている。同党院内関係者は、「第２２代国会に入るとすぐに再発議し、成立するまで発議を続ける」と話した。
一方、与党内では、尹大統領の拒否権行使後、無記名で行われる国会本会議の再採決の際、１７票だけ造反しても拒否権が無力化される可能性があることを懸念するムードもある。与党関係者は、「チェ上等兵特検法に賛成の立場を公に明らかにした議員がいるため、党論に従わず投票する可能性も排除できない」と話した。
イ・サンホン記者 カン・ソンフィ記者 ク・ミンギ記者 dapaper@donga.com · yolo@donga.com · koo@donga.com
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