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みんなを敗者にした無責任な年金改革

Posted May. 07, 2024 08:36,   

Updated May. 07, 2024 08:36

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国民年金の加入者らが羨む公務員年金は、保険料率(18%)が国民年金の2倍だが、1993年から赤字となっている。それを政府が毎年、税金で補っている。来年は過去最大規模の10兆ウォン前後をつぎ込まなければならない。年金を受け取る退職公務員が、69万人に増えるためだ。血税で支える公務員年金は、16年後に赤字に転じる国民年金の「予定された未来」だ。

国民年金の加入者は、公務員年金の約17倍、受給者は10倍を超える。巨大な国民年金が枯渇すれば、数百兆ウォンの血税をつぎ込んでも耐え難い。未来世代が耐えられる規模でもない。「年金ディストピア」の扉が開かれているにも関わらず、国民年金の保険料率は1998年以降9%に縛られている。政府と政界が改革を先送りにしつづけた結果だ。それなのに、税金でばらまく基礎年金のみ、我先に引き上げている。

改革の先頭に立った第21代国会年金改革特別委員会(年金特委)でさえ、期限を2度も延長した末、任期を1ヵ月も残さず、欧州出張に行って議論するという荒唐無稽な余裕を見せている。今まで所得安定に重きを置くべきか、財政安定に焦点を合わせるべきかという年金改革の方向性をめぐる合意さえできなかった与野党が、海外で保険料率と所得代替率のような母数のみ政治的に妥協する「数字改革」をするということか。

国会年金特別委員会のキム・サンギュン公論化委員長は先月、「より多く払ってより多く受け取る」形の国民年金の改革案を選んだ市民代表団のアンケート調査の結果を出し、「これからは国会の時間だ」と話した。「国会が公論化の過程で導き出された方向性を十分考慮し、所得保障と財政安定を調和させる年金改革案を用意してほしい」という要求した。

だが、改革方向をめぐる政治的合意を引き出す「国会の時間」が先行してこそ、まともな改革になる。それを飛ばして、利害当事者である市民に対し、「所得保障」と「財政安定」の中で二者択一しろという選択肢をいきなり突きつけたため、世代間の不信と対立が大きくなっている。未来世代は、「なぜもう少し払ってたくさん受け取るのか」と反発し、既成世代は「より多く出せばより多く受け取るべきではないか」と抗議する。内面にある「損失回避」の性向が働くことになれば、人々は皆が敗者になる選択をする。

利害関係者の多い厳しい改革が成功するためには、皆が勝者になれるという信頼がなければならない。私たちは老後所得を保障するために未来世代と年金財政を犠牲にすることも、財政のために経済協力開発機構(OECD)の最高水準の老後貧困を放置することもできない「複合危機」の状況に置かれている。「より多く出すが、少しだけ上げてもらう」というふうに、所得保障と財政安定のジレンマを克服するための「第3の道」の方向性を政界が提示し、専門家たちにいくらを出して、どれだけ受け取れば持続可能なのか合理的実行策を出すようにしたとすれば、国民の選択は一層容易だっただろう。今のように政界が作っておいた「所得保障」と「財政安定」という枠組みに閉じ込められ、各自の損失だけを問い詰めるために悩むこともなかった。

改革に対する共感ができれば、母数改革とともに企業説得が必要な納入期間の延長と定年延長、スウェーデンのように所得再分配の機能が重なる基礎年金と国民年金の役割調整、日本のように未来世代に負担を転嫁しないように年金額を見直す自動調整装置の導入のような難しい改革課題も推進する力が生まれる。そうしてこそ、どのようにより多く払い、さらにいくらを受け取るべきか、改革の選択肢も広がる。2040年になると、国民年金を最後に、公務員年金や私学年金、軍人年金の4大年金がいずれも赤字に転じる。その時になれば皆本当の敗者になる。