Go to contents

認知症100万人の韓国、「国家責任制」という幻想を捨てよ

認知症100万人の韓国、「国家責任制」という幻想を捨てよ

Posted February. 24, 2026 09:41,   

Updated February. 24, 2026 09:41


昨年、日本を訪れ、認知症高齢者向けの小規模共同住宅「グループホーム」を取材した。一般的な大規模な介護施設と異なり、各階5~9人の少人数で個別にケアするのが最大の特徴だ。3つのフロアに計27人が暮らしているが、介護職員は25人に上る。夜間も入所者3人に対し1人以上のケア人員を維持するためだ。1人の介護職員が5~8人の認知症患者を担当する韓国の施設との差は大きかった。

認知症患者といえども常に施設内にとどまるわけではない。朝食後は職員と2~3人ずつ組んで散歩に出る。近隣の幼稚園児が定期的に訪れ一緒に絵を描き、ハロウィーンや祝日には共にパーティーを開く。担当者にどうやって施設の敷居を下げたのか尋ねると、「認知症高齢者が孤立せず、地域の一員として最期を過ごすことが重要だ」との答えが返ってきた。自宅や施設に孤立したまま余生を送る韓国の現実が重なり、複雑な思いを抱いた。

日本も当初から認知症に寛容だったわけではない。長年の介護に疲れた家族による事件が相次ぎ、虐待や放置も少なくなかった。急速な高齢化により、2040年には認知症患者が高齢者人口の半数に当たる約1800万人に達すると見込まれる中、日本政府は1980年代後半から本格的な対策に乗り出した。2004年には「痴呆」という表現を「認知症」に改めた。

こうした積み重ねが、日本を「認知症と共に生きる」社会へと変えた。象徴的なのが全国で8000カ所以上運営される「認知症カフェ」だ。月に一度、認知症の高齢者が店員として働き、注文を受けたり客と交流したりする場だ。普段からも、認知症や発達障害のある子どもを持つ家族が集う「サランバン(憩いの場)」の役割を果たしている。地方自治体や地域企業もこれを積極的に後援している。政府と企業、そして認知症患者の家族による努力が積み重なり、「認知症患者や障害者は隔離の対象ではなく、共に生きる隣人である」という認識が広がった。

認知症人口が100万人に達した韓国はどうか。2017年、政府は「認知症国家責任制」を掲げ、医療費負担の軽減や専門施設の拡充を約束した。重症患者の経済負担の軽減には一定の効果があったが、約10年が経過したにもかかわらず、認知症患者の家族の介護負担が大きく軽減された、あるいは認知症に対する社会的認識が顕著に改善されたと実感している国民は多くない。

最近発表された第5次認知症管理総合計画(2026~2031年)も大きな変化は乏しい。認知症患者の資産を管理する「認知症マネー公的信託」の導入を除けば、目新しい政策は見当たらない。73の細部課題を掲げるが、その大半は、認知症安心病院や主治医制度など、既存事業を拡大する水準にとどまっている。

最も急がれるのは、認知症患者の半数以上(52.6%)を占める一人暮らしの高齢者や、介護インフラが脆弱な農漁村地域の認知症患者への支援を強化することだ。「国家責任制」という大げさなスローガンを掲げるよりも、地域事情を最もよく把握している地方政府に権限を移譲する大胆な決断も必要である。省庁間の縦割りによって分断的に使われている財源をうまく活用するだけでも、日本や欧州に引けを取らない認知症フレンドリーな地域を複数つくることは可能だ。