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公捜処の手抜き捜査は誰が補うのか

Posted October. 21, 2025 08:25,   

Updated October. 21, 2025 08:25


監査院幹部のキム氏は4年間、待機発令のままだ。所属部署も職務もなく、出勤しては待機室を行き来し、帰宅する日々を繰り返している。高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が着手したキム氏への捜査が何年も終結していないためだ。捜査対象となった公職者は名誉退職もできず、職務にも就けない。

キム氏は2021年10月、監査院の捜査要請を受けて公捜処の捜査線上に浮上した。建設分野の監査を担当していた彼が、借名会社を設立して工事を受注し、約15億ウォンの利益を得たという収賄疑惑を解明してほしいという要請だった。公捜処は2年間捜査を続けた後、2023年11月にキム氏に対する逮捕状を請求した。

しかし、裁判所は「キム氏の関与を認める証拠が十分でなく、賄賂額の算定にも争いの余地がある」として逮捕状を棄却した。これは、キム氏が賄賂を受け取った証拠をさらに収集し、金額を再計算するなど、実質的に捜査をやり直せという意味だった。

だが、公捜処は補完捜査を行わず、「起訴してほしい」として事件を検察に送検した。現行法上、公捜処は裁判官・検察官や警察の警務官以上に対しては直接捜査と起訴が可能だが、それ以外の高位公職者については捜査のみ可能だ。検察は昨年1月、「補完捜査が必要」として事件を公捜処に戻そうとしたが、公捜処は「検察が事件を返す法的根拠はない」と反論した。両機関が10カ月以上も対立を続ける中、検察は昨年末から自ら補完捜査を行うことを念頭に置き、事件を第一線の検察庁反腐敗捜査部に委ねた

ところが今年に入り、裁判所が公捜処による尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領関連事件で、検察の拘束期間延長申請を不許可としたことで状況は一変した。裁判所は「公捜処検事が捜査して検察に送致した事件で、検察が引き続き捜査する相当な理由があるとは言い難い」と判断した。この論理に従えば、検察がキム氏を補完捜査して起訴しても、後に裁判所で「権限のない検察による違法捜査」と判断される可能性もある。検察内部では、この事件を監査院など他の機関に移す案も検討されたが、結論は出ていないという。

こうした混乱の根本原因は、公捜処の捜査が不十分だった場合に誰が補完するのかを法律で定めていない点にある。2020年の公捜処法の制定過程で、補完捜査の主体や権限を緻密に設計しなかったことが問題だ。検察が補完捜査なしに公捜処の判断どおりキム氏を起訴すれば、当面は「監査院幹部収賄疑惑」事件を処理できるだろう。しかしそれは、刑事司法機関の抑制と均衡を通じて公職者捜査を徹底し、人権を保護するという公捜処設立の趣旨に真っ向から反する。

来年10月からは検察庁を廃止し、重大犯罪捜査庁(重捜庁)と公訴庁を新設する刑事司法制度の大改革が行われる。新設される公訴庁が、重捜庁や警察の捜査に対して直接補完捜査を行えるのかどうかも、今後の立法で定められる。この際、公訴庁が公捜処の捜査結果を補完できるのか、あるいは補完を要請できるのかを法律で明確に規定すべきだ。「発足から5年間で起訴6件」という惨憺たる成績表のまま公捜処を維持するつもりなら、公捜処・重捜庁・警察・公訴庁の権限争いを整理する後続立法が不可欠である。