最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)大統領候補は「真の韓国」、与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)候補は「新しく、韓国」、保守系少数野党「改革新党」の李俊錫(イ・ジュンソク)候補は「新しい大統領」というスローガンで競っている。「真の」「新しく」「新しい」という言葉はもっともらしく聞こえるが、何をどのように変えるのかという方向性が欠けた政治的スローガンだ。候補たちは18日の経済分野のテレビ討論でも説得力のあるビジョンを示すことができなかった。企業経営では「測定できなければ管理できず、改善できない」と言われる。この点で、候補者たちが打ち出した経済公約は「なぜ」と「どのように」が欠けた落第生の答案用紙のように不十分だ。
住みやすい国は少なくとも若者には働く機会が多く、高齢者には安定した所得がある国だ。私たちは若者には雇用が不足し、高齢者は貧困に苦しむ逆さまの国に転落した。にもかかわらず、政府の政策は仕事を求める若者に金をばらまき、所得が必要な高齢者にはより長く働かせるという「あまのじゃく対策」で問題を覆い隠すのに汲々とした。統計庁によると、製造業の雇用は先月まで10ヵ月連続で減少した。製造業の雇用比率も15%台に落ち込んだ。先月の若年層の雇用率は45.3%で、全年齢層の中で唯一減少した。「ただ休んでいる」という若者の割合は5年ぶりに最も高い。
これほどなら「雇用非常事態」が発令されてもおかしくないのに、候補者たちはなぜ雇用難が続くのか、何を変えれば解決するのか、有権者が望む診断と代案よりも、若者求職支援金、融資拡大、賃貸住宅の供給といった当面の苦痛を和らげる鎮痛剤のような若者政策を一方的に並べている。
高齢者の生活が楽なわけでもない。昨年、超高齢社会に突入し、65歳以上の人口は1千万人を超える。高齢者の貧困問題は改善されつつあると言うが、依然として経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最も深刻だ。韓国銀行によると、高齢自営業者の数は2015年の142万人から32年には248万人に増えるという。緻密な準備もなく高齢者の基準年齢を引き上げたり、定年延長を推進したりするのは、高齢化で膨らむ国家財政負担を個人や企業の負担に転嫁しようとする「爆弾回し」に近い。
李在明、金文洙の両氏は、唐突に人工知能(AI)などの投資のための100兆ウォン規模のファンドを作ると言う流行の公約を競って打ち出した。中国はお金がないからNVIDIAのような会社を作れないわけではない。効率的な資源配分、人材確保、研究開発インフラが整ってこそ成功できるということだ。検証もなくバラ色の収益分配を名分に国民のお金まで引っ張ってこようというのは、ともすれば投資リスクを国民に押し付ける可能性がある。
英紙フィナンシャル・タイムズによると、世界は覇権競争のために経済政策を動員する「地経学(geoeconomics)時代」に突入した。良い雇用を確保するための産業政策の役割は大きくなり、国家間の競争は激化するだろう。韓国が取り残されないためには、選挙のたびに登場する型通りの規制改革や財政投入だけでは難しい。必要であれば過去の経済開発5ヵ年計画や人材育成を主導した経済企画院のような経済産業政策コントロールタワーを地経学時代に合わせて整備し、経済の大きな絵を再び描かなければならない。若者雇用対策とともに、若いうちから老後に備えることができるよう所得再分配機能に重点が置かれた国民年金の役割調整などが含まれた年金構造改革も並行する必要がある。
今回の大統領選挙こそ、若者は仕事がなくてさまよい、高齢者は所得を求めて公共労働の現場をさまよう逆さまの韓国経済を立て直す転換点になるべきだ。そして次の選挙で、若者には機会、高齢者には所得がどれだけ増えたのか成果を測定し、厳しく審判しなければならない。企業であれ国家経営であれ、測定できなければ改善は永遠にない。
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