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「34歳首相」を生み出したフランスの政治の力

「34歳首相」を生み出したフランスの政治の力

Posted February. 17, 2024 08:33,   

Updated February. 17, 2024 08:33

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欧州のメディアは年初からフランスの若い政治スターの誕生を興味深く取り上げている。主人公は先月9日、フランス共和国史上最年少の首相に任命されたガブリエル・アタル氏(34)。アタル氏がよく着るネイビーブルーのスーツの特徴や、かつての同性の恋人との関係までつぶさに報道される。現在の話題性だけ見れば、英国王室のウィリアム皇太子やどんなアイドルも凌駕するようだ。

庶民の生活とはかけ離れたエリート、ブルジョアという反感もある。成功した映画制作者であり弁護士である父親のもと、パリの名門私立高校とグランジェコールであるパリ政治大学(シアンスポ)を卒業し、裕福に育ったからだ。

にもかかわらず、アタル氏は高い支持を得ている。1日、フランス紙レゼコーの世論調査によると、アタル氏の信頼度は32%で、マクロン大統領の信頼度(25%)より7ポイント高い。前任のエリザベト・ボルヌ首相の就任時の支持率(27%)よりも5ポイントも上回った。既成政治家より若いエネルギーで教育改革を成し遂げたという評価が多い。

アタル氏はこのような期待に応えるように、首相就任後の最初の課題だった農民の「トラクターデモ」の鎮静化に成功した。このような成果をあげた秘訣は、優れたコミュニケーション能力にある。彼は早くから流麗な話術で注目され、「言葉の射手」と呼ばれた。コミュニケーションスキルのポイントは、労働界や教育界がよく使う表現を自分の演説に取り入れることだ。国民に「首相が私たちの要求に耳を傾けている」と感じさせるためだ。アタル氏は、耳を傾けていることを示すために自ら農村を訪れ、その様子は自身のソーシャルメディアにリアルタイムでアップされた。

率直で気さくなところも国民の心をつかんでいる。10代の頃、学校でいじめを受けたというやや恥ずかしい経験も打ち明けた。首相に指名された直後、外相に抜擢されたステファン・セジュルネ氏と過去に同性の恋人だったことも公開した。3年前、あるメディアとのインタビューで「裕福な家庭に生まれたのは幸運であり、このような事実を認める」と淡々と話したこともある。

アタル氏の内功を育てたのは、青年政治を積極的に受け入れるフランス政治の土壌だ。アタル氏が社会党に入党して政治を始めたのは17歳の時。韓国とは異なり、各政党が加入年齢を裁量で内規で決めているので可能だ。社会党は15歳以上の青少年であれば、党員として加入して活動することができる。

政党ごとに活性化された青年組織も一役買った。アタル氏は2010年、社会党青年組織所属でパリ政治大学支部代表選挙に出馬し、学習の機会とした。中道性向のルネサンスの「マクロンと共にする青年たち」、極右国民連合(RN)の「青年国民連合」など、政党ごとに堅固な青年組織が青年政治家たちのインキュベーターとなっている。

政治制度だけでなく、文化も若者に開かれている。陣営の論理にとらわれず、有能な青年であれば他の派閥であっても受け入れる。実際、アタル氏は政治入りした当初、進歩的な社会党で10年間活動した後、離党し、マクロン氏が率いる中道派の「共和国前進」に参加した。昨年、マクロン第2期内閣の教育相の時は中道性向のルネッサンス所属だったが、伝統的な保守である共和党議員の支持を多く受けた。もしアタル氏が韓国で政治をしていたら、「渡り鳥政治家」または「右派」というレッテルを貼られたかもしれない。

フランス下院議員の平均年齢は12年54.6歳だったが、22年の総選挙では48.5歳に下がり、さらなるアタル氏の出現を予告している。国会議員の平均年齢が58歳の韓国より10歳ほど若い。アタル氏やマクロン氏のような若い政治家たちが、韓国社会の当面の課題でもある労働・教育改革を主導し、古い政治を変えていることを私たちも注目しなければならない。