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「もっとちょうだいなんて言わないで」、物価高・不景気・台風に泣く商人たち

「もっとちょうだいなんて言わないで」、物価高・不景気・台風に泣く商人たち

Posted September. 05, 2022 09:01,   

Updated September. 05, 2022 09:01

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豊かな収穫の季節、感謝の気持ちも人情もみなぎる秋夕(チュソク=旧暦の8月15日の節句)が近づいてきた。今年の秋夕は、長い新型コロナウイルス感染症の危機を乗り越え、距離確保なく迎える初めての名節となる。しかし、最近の伝統市場では、秋夕特有のにぎやかな活気を感じにくい。物価高や景気低迷、水害の3重苦に売る人も、買う人も笑う余裕を失った。荒々しい台風が水爆弾をもたらすという予報に、商人たちは「最後の希望まで台風が持ち去っていくのか」と茫然となっている。

秋夕連休を控え、東亜(トンア)日報の取材チームが見て回ったソウルの伝統市場は、先月の豪雨被害の跡形も洗い落とせずにいた。日ごとに跳ね上がる物価を見ながら、秋夕の書き入れ時用として早めに買い入れておいた穀物と干物が、袋と冷蔵施設ごとに水に浸かったところが多かった。それでも年中最高の書入れ時を見逃すことができず、借金を集めて新しい冷蔵庫を買い入れ、秋夕商売を準備する商人もいるが、新型コロナの不況の末に襲った大雨に、これ以上持ちこたえられず、廃業を準備している店も見えた。台風11号まで上がれば、それさえも客足が途絶えるのではないかと、いくつかの精肉店は牛肉を半額で売りに出した。

供え物を買いに来た人たちの買い物かごは、ほとんど空いている。10万ウォンを握って出てきたが、白菜1株で1万ウォン、リンゴ10個入り1箱で4万ウォンの支払いを求められる。今年の秋夕の祭祀費用は平均31万8045ウォンで、昨年より6.8%上昇した。松餅やスケトウダラ、果物を順に抜いても、一膳立てができない。コロナ以降、久しぶりに集まる名節なのに、親戚がたくさん来るのではないかと心配しなければならないほどだ。人情溢れる店を探したが、主人は目もくれない。陳列台に自らかけておいた無情な案内文句のためだ。「材料価格が上がったので、もっとちょうだいなんて言わないでください」。

豪雨被害が出ると、区長と国会議員たちが先を争って訪ねてきて被害状況を尋ねた。政府は、「すべての行政力を動員して、秋夕前に被害補償を終える」という約束も出した。しかし、1ヵ月が過ぎて秋夕が近づくまで、最大400万ウォンを与えるという政府の災難支援金はニュースがない。言葉は早くて行動は鈍い行政力は、未曾有の景気低迷と物価高の事態が民生を焦土化させた非常状況でも変わらない。買うものがなくても、一周すると生きていく力を得たりしていたたくましい伝統市場が、力を失いつつある。「これ以上でもなく、秋夕のように」というあの季節なのに。