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逆に流れる時間

Posted January. 13, 2022 08:35,   

Updated January. 13, 2022 08:35

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好きなことに没頭することよりも幸せなことがあるだろうか。19世紀のドイツの画家、カール・シュピッツヴェークは、古めかしい図書館で読書に没頭する老人を描いた。彼はいったい誰で、何の本をそれほどまでに集中して読んでいるのか。

裕福な商人の息子に生まれたシュピッツヴェークは、本来は薬剤師だったが、遺産を受け継ぐことになると、すぐに迷うことなく画家に転業した。美術を正式に学んだことはなかったが、美術館に展示された巨匠の作品を見て、様々な技法と様式を学んだ。特に、英国の画家ウィリアム・ホガースの影響を受けたウィット溢れる風刺画で大きな人気を得た。

シュピッツヴェークの代表作の1つに挙げられるこの絵には、読書に没頭する老人が登場する。ひどい近視の白髪の老人は、図書館のステップはしごの最上段に立って本を読んでいる。両手だけでなく、両脇と足にも本をはさんでいる。どれほど没頭しているのか、ジャケットのポケットからハンカチが出ていることにも気づかない。面白い小説でも読んでいるのかと思われるが、本棚には「形而上学(Metaphysics)」と書かれている。古典哲学書にはまっているのだ。フレスコ画が描かれた図書館の天井と装飾的な本棚は全てロココ時代に流行したものだ。老人が身に着けていた黒い半ズボンも18世紀の貴族が好んで着たもので、多分に時代錯誤的だ。画家は、絵の題名を「司書」とつけた後、「本の虫」に変更した。特定の職業人でなく本好きの上流層知識人の肖像ということだ。画面の左下には外界を象徴する地球儀がホコリをかぶったまま放置されている。

この絵が描かれたのは「1848年革命」が起きた2年後だった。変化を望む革命勢力と既得権を維持しようとする保守主義者が衝突した時代だった。絵の中の老人は外界には関心がなく、古い知識の中だけで安定と幸福を求めている。老人の時間は逆に流れているのだ。画家は過去に閉じこもって変化を拒否する人々を嘲弄する意味でこの風刺画を描いたのだ。