Go to contents

脳の構造と機能を機械と見ることができるか

脳の構造と機能を機械と見ることができるか

Posted October. 09, 2021 08:30,   

Updated October. 09, 2021 08:30

한국어

映画「トランセンデンス」(2014)、「ルーシー」(2014)、「X-MEN」(2000)などは、人間の脳の無限の潜在力を素材にしている。特に、コンピュータに主人公の記憶を移植するという内容の「トランセンデンス」は、先端科学技術と結合して脳の機能を最大化する話を描いた。これらは一様に、脳と記憶、そして意識を一種の機械あるいは物質と見る唯物論の思考をうかがわせる。だが、観念ではなく物質と見る見方が出てくるまで、迂余曲折を経験しなければならなかった。

英国の遺伝学者である著者は、生命科学のホットイシューである脳科学の歴史を先史時代から最近まで追跡する。著者によると、『人間機械論』を書いた18世紀フランスのジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリーは、脳に対する唯物論的解釈において外せない人物だ。ラ・メトリーは1747年に出した『人間機械論』で、身体と心で起こるすべてのことを物質の作用で説明できるとし、脳に注目した。魂のすべての能力が脳など特定の身体組織に由来すると見たのだ。プラトンと中世スコラ哲学の観念論で人間の精神を眺めたヨーロッパ人に、ラ・メトリーの見解は不敬に違いなかった。ラ・メトリーは、自身の本を禁書に指定した故国を追われるようにオランダに行き、ドイツで生涯を終えた。

実際、考えと感情が脳に由来するということも、17世紀までは広く受け入れられていなかった。16世紀にアンドレアス・ヴェサリウスが書いた人体構造の書によって、脳の構造が他のどの臓器よりも複雑だということが明らかになったが、具体的な機能は分からなかったためだ。シェイクスピアが「ヴェニスの商人」で、「気まぐれな恋はどこで生まれる。心の中か、頭の中か」という一節を書いた背景だ。 

最新の脳科学研究は、ラ・メトリーの唯物論の見解に限界があることを示唆する。脳が機械あるいはコンピュータなら、部品を分解するように特定の機能を担う領域が具体的に確定されなければならない。しかし、最近の研究は、脳の反応が様々な領域で同時に活性化する現象を示す。これに対して著者は、「脳は機械とは違って、人間が設計したものでないため」と強調する。結局、脳はその複雑な構造と機能により、21世紀にも依然として未知の世界のままだ。


金相雲 sukim@donga.com